消化管内視鏡(胃カメラ)
2026年8月現在
内視鏡と聞いて一番イメージが強いのは、消化管内視鏡(いわゆる胃カメラ)でしょう。多くの人は内視鏡といわれると、胃カメラを頭に思い浮かべると思います。
消化管内視鏡は、異物の摘出・原因を調べる検査・組織を採る検査・胃チューブの設置など、いろいろな場面で使います。このページでは、それぞれどんなときに行うのかをご説明します。
消化管内視鏡とは
口や鼻から挿入する、やわらかいファイバーでできたカメラです。食道・胃・腸まで、曲がりくねった消化管の中を無理なく進んでいくことができます。先端のライトで内部を照らしながら、鮮明な映像をモニターに映し出します。
やわらかいファイバーでできているため、軟性内視鏡とも呼ばれています。手元の操作部でレバーを動かすと、先端の向きを自在に変えることができ、粘膜のすみずみまで観察することができます。
胃の粘膜の視野(イメージ)と、軟性内視鏡・異物摘出用の鉗子です ※イメージ図です
なぜ「やわらかく曲がる」のか
やわらかく曲がることは、一見すると頼りなく思えるかもしれません。ただ、食道・胃・腸のように曲がりくねった管の中を進む場所では、柔軟性そのものに利点があります。
ファイバーが体の形に合わせてしなるため、無理な力をかけずに奥まで到達できます。手元の操作で先端を自在に曲げられるので、粘膜のすみずみまで観察したり、狙った場所に器具を届けたりすることができます。
逆に、お腹や胸のようにガスでふくらませて空間をつくれる場所では、まっすぐな硬い筒のほうが適しています。そこで使われるのが、次にご説明する硬性内視鏡です。
硬性内視鏡との使い分け
内視鏡には、軟性内視鏡のほかに、硬性内視鏡(腹腔鏡・胸腔鏡)があります。どちらが優れているというものではなく、見たい場所によって使い分けます。くわしい使い分けは内視鏡手術とは?のページで、硬性内視鏡でできることは硬性内視鏡/内視鏡外科のページで詳しくご説明しています。
当院で対応している処置
異物の摘出
大きさによっては開腹手術になることも
吐く・下痢が続くときの検査
検査と治療を同時に行えることもあります
組織を採る検査(生検)
慢性の消化器症状の診断に
胃チューブの設置(胃瘻・PEG)
開腹より負担が少なく短時間
検査当日の流れ
消化管内視鏡の検査は全身麻酔下で行います。安全に検査を行うため、事前の絶食にご協力をお願いしています。
絶食のお願い
食道・胃・十二指腸を診る検査は12時間以上前から、大腸を診る検査は24時間以上前からの絶食が必要です。検査内容によって準備が異なるため、事前に具体的な指示をお伝えします。
検査の所要時間
検査そのものは15〜30分程度です(処置の内容によって前後します)。
帰宅まで
麻酔から覚めて状態が落ち着けば、ほとんどの場合は日帰りでお帰りいただけます。状態によっては入院になることもあります。
誤飲・誤食したものの摘出
誤飲・誤食などで、誤っておもちゃや異物を食べてしまった場合、内視鏡を使って摘出することができます。X線(レントゲン)や超音波検査で胃の中に異物があることを確認したうえで、内視鏡を使って取り出します。先端で掴むことのできる鉗子やワイヤーとよばれる器具を胃の中に挿入し、内視鏡で観察をしながら異物を掴んで回収します。大きな異物はワイヤーで引っかけて摘出します。
大きさによっては内視鏡で取れないこともあります
あまり大きなものでは、内視鏡の鉗子で掴むことができない場合もあります。その場合は開腹手術での摘出が必要になります。誤飲したものの大きさや形は、診察で確認したうえでどちらの方法が適しているかをご説明します。
誤飲したときの応急対応や受診の目安については、こちらのページでも詳しくご説明しています。
「消化管異物」の実際の症例
吐く・下痢が続くとき
食べたごはんを吐き出してしまう場合や、胃液を繰り返し吐いてしまう場合には、軽い胃腸炎のようなものから、異物によるもの、炎症や腫瘍による胃腸の病気(消化管疾患)まで、いろいろな原因が考えられます。診断には、いくつかの検査をしてから原因を突き止めていきます。
消化管内視鏡検査は、原因を知るうえで非常に有益な方法です。状況によっては検査と治療を同時に行うことができるのも特徴です。一方で、全身麻酔が基本的には必要になるなど、動物に負担がかかる場合があります。適切な診断と、飼い主さんとのご相談のうえで検査を行っています。
慢性的に吐く・下痢が続く原因については、こちらのページでも詳しくご説明しています。
「嘔吐」の実際の症例
組織を採る検査(生検)
慢性の下痢や慢性の嘔吐、下血などの消化管症状が続く場合は、原因を追及するために消化管の状態を正確に把握する必要があります。胃や腸の内部に、腫瘤やポリープ、潰瘍などがある場合があります。また、慢性下痢や低蛋白血症などの原因に、慢性炎症を伴った腸の疾患が存在することもあります。
炎症性腸症と総じて言われる病気では、下痢や嘔吐などの消化器症状だけではなく、低アルブミン血症などの血液検査での異常がある場合もあります。その際には組織生検を行い、病理組織検査で病名を確定することで、正確な治療が可能となります。内視鏡生検についてはこちらのページでも詳しくご説明しています。
胃チューブの設置(胃瘻・PEG)
食道や喉の病気で食事を摂ることのできない動物は、何らかの方法で直接胃に食物を送ってあげる必要があります。また、長期的に食欲のない動物や、治療に伴って食欲不振が続く場合にも、栄養を計画的に摂ることが治療にはとても大切です。
胃瘻をはじめとするチューブフィーディングのための胃チューブ設置には、開腹をする場合と内視鏡を用いて行う方法があります。開腹手術に比べて内視鏡を用いた方法では負担が少なく、短時間で行うことが可能です。内視鏡を用いた胃瘻設置は、PEG(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy)と呼ばれています。
「胃瘻」の実際の症例
内視鏡だけで対応できない場合もあります
消化管内視鏡は体への負担が少ない検査・処置ですが、万能ではありません。異物が大きい、腸まで進んでしまっている、腸に穴が開く危険がある、といった場合には、開腹手術による対応が必要になります。どちらが適しているかは、診察・検査の結果を踏まえてご説明したうえで決めていきます。
当院の内視鏡システムについて
当院では、動物専用に設計されたハイビジョン画質の内視鏡システムを使用しています。細部まで確認しながら検査・処置を行うことができます。
検査・処置を担当する獣医師
院長 吉田宗則
- 所属学会 日本獣医麻酔外科学会 / 日本獣医内視鏡外科学会 / 日本獣医がん学会など
- 役職 日本獣医内視鏡外科学会 技術認定委員長 / 日本動物病院協会 学術委員など
- 資格 日本獣医内視鏡外科学会 技術認定Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ
- 講演 内視鏡手術に関する様々な講演・教育講演
もっと詳しく
ご相談ください
「誤飲したかもしれない」「吐く・下痢が続いている」といったご相談は、診察としてお受けしています。実際に診させて頂いたうえで、必要な検査や処置をご提案します。緊急性が疑われる場合は、様子を見ずにすぐにご連絡ください。
はじめてご来院の方は 初診の患者さんへのご案内 もあわせてご覧ください。初診問診票を事前にご記入いただくと、当日の受付がスムーズです。