接種プログラムに関して
狂犬病ワクチンを除き、ワクチン接種は義務ではありません。ただ、多くの動物にとって健康維持のために重要であることも事実です。生活環境にあったワクチンを、負担を最小限にしながら接種していくプログラムを考えることが大切です。
現在の日本では年に1度の接種が広く行われています。一方、世界小動物獣医師会(WSAVA)をはじめ、欧米の獣医師会では接種間隔を延長する提言(ガイドライン)も出されています。ただし日本と海外では動物の生活環境が異なり、日本での有効性の検討はまだ行われていません。そのため海外の状況をそのまま当てはめることはできないのが実状です。
これらのガイドラインも「ワクチンを打たなくてよい」という意味ではなく、決まった時期に動物病院で健康管理の相談を受けることは変わらず推奨しています。当院も、定期的な健康管理を通して動物の健康を維持していくべきという考えに同調しています。
WSAVAのガイドラインでは、コアワクチンについては3年に1度の接種で感染防御が可能とされています。ただしこれはコアワクチンに限った話で、日本で広く使われているノンコアワクチンを含む場合は事情が異なります。
当院でも、十分な感染防御能力があると判断できる場合には接種間隔を延長しています。ただし飼い主さんのご判断だけで間隔を延長することはお控えください。全ての犬・猫で同じように抗体価(防御力)が保たれるわけではなく、20〜30%の犬では十分な抗体価が維持できていないという報告もあります。そのため当院では抗体検査などを組み合わせて判断しています。状況は患者さんごとに異なりますので、獣医師にご相談ください。
大切なご家族は犬ですか、猫ですか?あてはまる方をお選びください。
子犬への混合ワクチン接種
生後8週齢ごろに開始し、3〜4週間隔で、14〜16週の最終接種まで進めます。
- 開始: 生後8週齢ごろ(ブリーダーやペットショップで済んでいることが多い)
- 間隔: 3〜4週おき
- 最終接種: 生後14〜16週(1年目の完了)
健康な成犬への混合ワクチン接種
日本では年1回の接種が一般的です。当院でも、レプトスピラを含む混合ワクチンは年1回の接種をお勧めしています。
世界的にはワクチン接種の回数を減らす流れがありますが、これはコアワクチン(3種の病原体に対するワクチン)についての話です。日本で広く使われているノンコアワクチンを含む混合ワクチンには、単純には当てはまりません。海外と日本では病気の流行状況も異なり、日本国内で検証された接種間隔はまだありません。
体質や健康状態にご心配がある場合は、コアワクチンに近い少ない成分のワクチンへの切り替え、接種間隔を広げる(※1)、抗体検査(※2)など、その都度ご相談しています。
老犬へのワクチン接種
「老化は病気ではない」— 健康であれば、年齢だけを理由に接種をやめる必要はありません。
高齢で問題になるのは免疫力や体力の低下です。病原体に曝露した際に感染しやすくなり、感染すると重症化しやすくなるため、安易にワクチンをやめることには危険があります。
一方で、高齢の犬にワクチンが負担にならないかという問題も事実です。持病を持っていることも少なくないため、そうした場合は接種を中止するのではなく、抗体検査(※2)をお勧めしています。詳しくは下記(※2)をご覧ください。追加接種と抗体検査のどちらを選ぶかについては、こちらのページで判断の目安をご案内しています。
ワクチンアレルギーが出たことのある犬
症状の程度によりますが、基本的にはより少ない成分のワクチンへの切り替えをご提案しています。ごく軽いアレルギーであれば、抗アレルギー剤を使用したうえで接種することもあります。強いアレルギーが出た場合やご心配な場合は、下記(※2)の病気をお持ちの患者さんと同様にご相談のうえ進めます。
病気を持っているなど健康状態に問題のある犬(※2)
持病の治療中、体質的に投薬を続けているなど、健康状態にご心配がある患者さんが対象です。当院では血液検査による抗体検査をお勧めしています。
- 血液検査で、ある病原体に対する抗体価(防御力)を確認します
- 十分な抗体価があれば、その年の接種は見送ります
- その後も定期的に抗体価を確認していきます
- 抗体価が不足している場合は、ワクチンの種類や打ち方をご相談のうえ接種を検討します
感染のリスクを考えると安易に接種をやめることも危険なため、副作用とのバランスをみながら、その都度ご相談しています。
当院で接種している猫のワクチン
当院では猫の3種混合ワクチンを接種しています。すべての猫に推奨されるコアワクチンで、犬のレプトスピラのような「年1回が必要な成分」は含まれていません。
- ネコパルボウイルス(猫汎白血球減少症)
- ネコヘルペスウイルス1型(猫ウィルス性鼻気管炎)
- ネコカリシウイルス
猫白血病ウイルス(FeLV)や猫免疫不全ウイルス(FIV)へのワクチンをご希望の場合は、生活環境をうかがったうえでご相談しますので、事前にお申し出ください。
子猫への混合ワクチン接種
基本的な考え方は子犬と同じです。
- 開始: 生後8週齢ごろ
- 間隔: 3〜4週おき
- 最終接種: 生後14〜16週(1年目の完了)
母親からもらった免疫が残っている間はワクチンが効きにくいため、複数回に分けて接種します。ただし初回接種の時期はその子によって異なるため、実際のスケジュールはご相談のうえ決めさせて頂きます(保護猫・譲渡猫で接種歴が不明な場合など)。
健康な成猫への混合ワクチン接種
日本では1年に1度の接種が一般的です。世界小動物獣医師会(WSAVA)のガイドラインでは、コアワクチンは3年に1度の接種で感染防御が可能とされており、猫の3種混合ワクチンはこれに該当します。犬のレプトスピラのように「毎年必ず」という成分は含まれていません。
ただし免疫の残り方には個体差があり、日本国内でこの3年間隔を公式に推奨する見解は現時点でありません。ご判断だけで間隔を延長することは避けて頂き、当院では抗体検査(※2)を組み合わせてご提案しています。
高齢猫へのワクチン接種
「何歳になったらやめてよいか」という年齢の区切りはありません。高齢でも健康であれば、成猫と同じように接種を考えます。
高齢で問題になるのは免疫力や体力の低下です。感染しやすくなり、感染時に重症化しやすくなるため、安易にやめることには危険があります。
一方で、腎臓の病気など持病を持つ高齢猫も少なくありません。そうした場合は接種を中止するのではなく、抗体検査(※2)をお勧めしています。十分な防御力が確認できれば、その年の接種は見送ります。
追加接種と抗体検査のどちらを選ぶかについては、こちらのページで判断の目安をご案内しています。
完全に室内で飼っている猫
外に出ないから不要では、と思われがちですが、当院では完全に室内で飼われている猫にも3種混合ワクチンの接種をお勧めしています。
- 飼い主さんの衣服や靴からウイルスが持ち込まれることがある
- 入院・ペットホテル・災害時の避難などで他の猫と接する可能性がある
- ヘルペスウイルス・カリシウイルスは無症状のまま感染している猫も多く、ワクチンは発症・重症化を抑える意味を持つ
ご心配な点があれば、生活環境も含めてご相談ください。
アレルギーが出たことのある猫・持病のある猫
考え方は犬の場合と同じです。上記「ワクチンアレルギーが出たことのある犬」「病気を持っているなど健康状態に問題のある犬(※2)」をご覧ください。いずれの場合も安易に接種をやめるのではなく、抗体検査を組み合わせてその子に合った方法をご相談しています。