気管支炎とは?気管炎との関連と、気管支鏡検査による診断
公開日: 2026年8月19日 / 執筆・監修: クウ動物病院 動物内視鏡医療センター
その咳、様子を見ていて大丈夫でしょうか
「最近、咳をすることが増えた気がする」「呼吸が速い、苦しそうにしている」——診察の中で、こうしたお話をよく伺います。犬や猫は人と違って自分の不調を言葉で伝えられないため、咳や呼吸の変化は、体の中で何かが起きているサインとして大切な手がかりになります。
咳や呼吸の異常の背景には、気管や気管支の炎症が隠れていることが少なくありません。一時的な咳で自然に治まることもありますが、原因はひとつではなく、感染によるものもあればアレルギーによるものもあり、対応の仕方も変わってきます。ここでは、気管支炎とはどういう病気か、よく似た気管炎とはどう関連するのか、そして原因をどう調べていくのかを、一緒に整理していきます。
当院での検査について
咳が続くとき、まず行うのはレントゲン検査です。肺炎や心臓病(肺水腫)が原因であれば、レントゲンで異常が見つかることが多く、それに応じた治療を始められます。
ただし、中にはレントゲンで肺に異常が見当たらないのに、咳がなかなか止まらないというケースもあります。この場合に考えられるのが、喉頭炎や気管炎といった、肺そのものではなく、のどや気管に原因がある病気です。これらは肺の病気とは違い、レントゲンだけでは判断しにくいことがあります。
このようなときは、内視鏡でのどから気管、気管支までを直接観察する検査が有用なことがあります。当院では細い気管支鏡による検査で、これを行っています。すべての患者さんに必要というわけではありませんが、咳が長引く場合は、一度精密検査をご検討ください。
気管支鏡検査でわかることは2つあります。ひとつは、気管支の内部を直接見て、赤みやむくみといった炎症の程度を確認すること。もうひとつは、気管支肺胞洗浄(BAL)で採取した細胞を調べて、炎症の性質(好中球性か好酸球性か)を確かめることです。この細胞の種類によって、感染によるものか、猫喘息のようなアレルギー性のものかを見分ける手がかりが得られます。
早めの受診をおすすめする目安
咳の多くは緊急性の低いものですが、呼吸そのものに負担が出ているサインがあれば、様子見をせず早めにご相談ください。
- 呼吸が明らかに速い、浅い
- 口を開けたまま呼吸している(特に猫)
- 唇や歯ぐきの色が白っぽい・青っぽい
- 咳の発作を繰り返す
- ぐったりしている、元気がない
気管支炎とは
気管支炎は、空気の通り道である気管支に炎症が起きている状態です。原因は大きく2つに分けて考えることができます。
感染性
- 細菌、ウイルス(猫風邪など)、寄生虫(肺虫)による感染
非感染性
- アレルギー性の炎症(猫喘息はこのタイプの代表的な病気です)
- 誤嚥(食べ物や吐いたものが気道に入ってしまうこと)
- 原因がはっきりしない慢性の炎症(慢性気管支炎)
猫喘息と気管支炎の違いも簡単に触れておきます。猫喘息は、アレルギー反応によって気道が発作的に狭くなるのが特徴で、気管支拡張薬などで症状が改善しやすい(可逆性が高い)傾向があります。一方、気管支炎(とくに慢性気管支炎)はより持続的な炎症で、進行すると気道の構造そのものが変化していくことがあります。どちらも咳や呼吸の異常として現れるため、症状だけで見分けるのは難しく、次にご説明する検査で炎症の性質を確かめることが重要になります。
感染性か非感染性かによって、その後の治療の方針(抗菌薬を使うか、ステロイドなど炎症を抑える薬を使うか)がまったく変わってくるため、この見分けがとても重要になります。
気管炎との関連
気管(のどから肺の手前までの空気の通り道)と気管支(そこから枝分かれして肺に入っていく部分)は、ひとつながりの空気の通り道です。そのため、気管に起きた炎症が気管支まで広がったり、両方に同時に炎症が起きたりすることが少なくありません。これをまとめて気管気管支炎と呼ぶこともあります。
「気管炎」も「気管支炎」も、乾いた咳や、興奮した時・運動した後に悪化する咳として現れることが多く、症状だけで両者を見分けるのは難しいのが実際のところです。
気管と気管支は、上の図のようにひとつながりに枝分かれしながら肺の奥へと続いています。枝分かれを繰り返すうちにどんどん細くなり、最後は肺胞という小さな袋の集まりに行き着きます。オレンジ色の部分は、気管支鏡が実際に届く範囲です。そこから先は物理的に細すぎてスコープが入れないため、気管支肺胞洗浄(BAL)で評価します。
図中の番号
1右肺 頭側葉
2右肺 中葉
3右肺 副葉
4右肺 尾側葉
5左肺 頭側葉
6左肺 尾側葉
7拡大図: 細気管支〜肺胞
実際の症例
抗生物質で改善しなかった咳の原因を、気管支鏡検査とBAL(気管支肺胞洗浄)で確かめた猫の症例をこちらでご紹介しています。
当院でのご相談
咳が続く、呼吸が苦しそう、抗生物質を使っても改善しない、といった場合はご相談ください。実際に診させていただいたうえで、必要な検査を一緒に考えていきましょう。
はじめてご来院の方は 初診の患者さんへのご案内 もあわせてご覧ください。初診問診票を事前にご記入いただくと、当日の受付がスムーズです。