耳・鼻・尿路の内視鏡検査
2026年8月現在
耳の奥、鼻の奥、尿の通り道。これらは外から見ようとしても、入り口までしか見えない場所です。症状が続いているのに原因がはっきりしない、という状況は、この「見えなさ」から生まれることが少なくありません。
当院では、直径2〜3mmほどの細い内視鏡を使って、こうした場所を直接見て確かめています。このページでは、どの場所を診られるのか、そこで何がわかるのかをご説明します。
左から、消化管内視鏡(太径タイプ・先端部径9.2mm)、消化管内視鏡(細径タイプ・先端部外径5.8mm)、 耳・鼻・尿路用の細径内視鏡(外径2.5mm)。実際の直径の比率で並べています ※イメージ図です
消化管内視鏡と比べると、これくらい細い
当院で使う消化管内視鏡(胃カメラ)の先端は、太いタイプで直径9.2mm、細いタイプでも5.8mmあります。これに対して、耳・鼻・尿路を診る細径内視鏡は直径2.5mm。実際の比率で並べると、下の図のような大きさの違いになります。
左から、消化管内視鏡(太径タイプ・先端部径9.2mm)、消化管内視鏡(細径タイプ・先端部外径5.8mm)、耳・鼻・尿路用の細径内視鏡(外径2.5mm)。実際の直径の比率で並べています ※イメージ図です
これだけ細くても、内部には処置具を通すための小さな穴(鉗子チャンネル)が確保されており、観察だけでなく洗浄や生検などの処置も行えます。
外から見えない場所を、直接見る
たとえば猫の耳は、鼓膜が奥深くにあり、外からの観察だけではしっかり見えないことが多い場所です。鼻の奥や尿道も同じで、外から届く光と視線では限界があります。
細い内視鏡は、その奥まで入り込み、先端のカメラで内部をモニターに映します。「見えないから推測する」のではなく、「見て確かめる」ことができるようになります。
かんたん解説:なぜ「細い内視鏡」が向いているのか
耳の中、鼻の奥、膀胱の中には、もともと空気や液体が入っていて、すき間(空間)があります。細い内視鏡は、この既にある空間へ入っていくのが得意です。
一方、胃や腸には空間がほとんどありません。そのため消化管を診るときは、空気を送り込んでふくらませる必要があり、それができる別の内視鏡(胃カメラ)を使います。同じ「やわらかい内視鏡」でも、診る場所によって道具が違うということです。
当院で診られる場所
耳の中 —— 耳道と鼓膜(耳鏡検査)
耳の奥のようすと鼓膜の状態を確認します。鼓膜の内側に液体がたまっているような変化にも気づけます。
鼻の奥 —— 鼻腔と鼻咽頭(鼻咽頭内視鏡検査)
鼻の内部と、鼻から喉へ抜ける通り道(鼻咽頭)を観察します。
気管と気管支(気管支鏡検査)
のどから肺へ続く空気の通り道を観察し、必要に応じて肺の奥の検査も行います。
尿の通り道 —— 尿道と膀胱(尿道鏡・膀胱鏡)
尿道の内部と膀胱の中を、直接見て確かめます。
耳の中 —— 耳道の奥から鼓膜まで(耳鏡検査)
外耳炎の治療を続けているのに良くならない場合、耳の奥で別のことが起きていることがあります。耳道にできものがある、鼓膜の内側に液体がたまっている、といった状態です。
細い内視鏡(耳鏡)なら、耳道の奥から鼓膜まで、汚れを洗い流しながら順に確認できます。できものが見つかれば、その場で組織を採って検査に出すこともできます。鼓膜の内側に液体がたまっていれば、それも見て取れます。
実際の症例は、高齢猫のふらつきと外耳炎と耳道ポリープのページでご紹介しています。
鼻の奥 —— 鼻腔と鼻咽頭(鼻咽頭内視鏡検査)
鼻づまりやくしゃみ、いびきのような呼吸音が長く続くとき、鼻の奥で通り道が狭くなっていることがあります。炎症のあとに組織が縮んで狭くなる、といった変化です。
細い内視鏡は、鼻の内部と、鼻から喉へ抜ける通り道(鼻咽頭)を直接映して確かめられます。狭くなっている場所が見つかれば、その広さを見たうえで、広げる処置を検討します。
実際の症例は、なおらない猫風邪のページでご紹介しています。
気管と気管支(気管支鏡検査)
咳が長引く、呼吸が苦しそう、といった症状が続くとき、レントゲン検査だけでは原因がつかめないことがあります。
細い内視鏡(気管支鏡)でのどから気管、気管支へと進み、内部のようすを直接確認します。あわせて、肺の奥に少量の液体を入れて回収し、その中の細胞や細菌を調べる検査(肺胞洗浄)も行えます。炎症の性質や、感染があるかどうかを判断する材料になります。
実際の症例は、猫の喘息のページでご紹介しています。気管支炎そのものについては、気管支炎とは?気管炎との関連と診断のすすめ方で詳しく解説しています。
尿の通り道 —— 尿道と膀胱(尿道鏡・膀胱鏡)
血尿が続く、膀胱炎を繰り返す、という状態が長く続くとき、膀胱の中に原因が残っていることがあります。超音波検査で見えるものもありますが、粘膜の細かい変化までは分かりません。
細い内視鏡(尿道鏡)は、尿道を通って膀胱の中まで進み、粘膜のようすを直接映します。気になる部分があれば組織を採って調べることができ、尿道に詰まった結石を取り出せる場合もあります。
実際の症例は、犬の膀胱ポリープのページでご紹介しています。
見るだけでなく、その場で処置もできます
細い内視鏡の中には、器具を通すための細い道が通っています。観察して異常が見つかったとき、そのまま次の手に移れることが、この検査の利点です。
洗う
汚れや出血で見えにくいときは、洗い流しながら観察を進めます。膿がたまっていれば、洗浄そのものが治療にもなります。
組織を採る(生検)
できものや炎症のある部分から、小さな組織を採って検査に出します。見た目だけでは分からない性質を調べられます。
取り出す・広げる
尿道に詰まった結石を取り出したり、狭くなった通り道を広げたりする処置を行うことがあります。
ただし、この内視鏡でできる処置には限りがあります。器具を通す道がとても細いため、扱える道具が限られるためです。まず「見て確かめる」ことが中心の検査とお考えください。処置が必要と分かった場合は、それに適した方法を改めてご相談します。
鎮静または全身麻酔で行います
耳の中や鼻の奥は神経が多く、痛みを感じやすい場所です。起きたままでは、動物にとって強い負担になります。そのため鎮静、または全身麻酔をかけて行います。どちらにするかは、診る場所と処置の内容によって決めます。
検査をお受けいただくかどうかは、麻酔の負担も含めてご相談のうえで決めていきます。麻酔の考え方については、腹腔鏡手術のデメリットのページでも詳しくご説明しています。
胃カメラ・腹腔鏡との違い
当院で使う内視鏡には、このページでご説明した細いもののほかに、消化管を診る胃カメラと、お腹や胸の手術に使う硬い筒の内視鏡があります。診る場所によって使い分けます。それぞれ、消化管内視鏡・硬性内視鏡/内視鏡外科のページでご説明しています。
検査を担当する獣医師
院長 吉田宗則
- 所属学会 日本獣医麻酔外科学会 / 日本獣医内視鏡外科学会 / 日本獣医がん学会など
- 役職 日本獣医内視鏡外科学会 技術認定委員長 / 日本動物病院協会 学術委員など
- 資格 日本獣医内視鏡外科学会 技術認定Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ
- 講演 内視鏡手術に関する様々な講演・教育講演
もっと詳しく
実際の症例をご紹介しています。
- 高齢猫のふらつき —— 耳の奥を診て、鼓膜の内側の状態を確かめた症例
- 外耳炎と耳道ポリープ —— 耳道にできものが見つかった症例
- なおらない猫風邪 —— 鼻の奥の通り道が狭くなっていた症例
- 猫の喘息 —— 気管支鏡検査で咳の原因を調べた症例
- 犬の膀胱ポリープ —— 膀胱の中を直接確かめた症例
内視鏡そのものについては、次のページでご説明しています。
- 内視鏡手術とは? —— 内視鏡の種類と使い分け
- 消化管内視鏡 —— 胃カメラでできること
- 硬性内視鏡/内視鏡外科 —— 腹腔鏡・胸腔鏡でできること
気管支炎そのものについては、こちらで解説しています。
ご相談ください
「耳の治療を続けているのに良くならない」「鼻づまりや呼吸の音がずっと気になる」「咳が長引いている」「血尿を繰り返している」といったご相談は、診察としてお受けしています。実際に診させて頂いたうえで、検査が必要かどうかをご提案します。
はじめてご来院の方は 初診の患者さんへのご案内 もあわせてご覧ください。初診問診票を事前にご記入いただくと、当日の受付がスムーズです。