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クウ動物病院 動物内視鏡医療センター  TEL: 06-6967-8668
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犬の腹腔鏡下胃固定術(GDVの予防・再発予防)

2026年8月現在

胃捻転拡張症候群(GDV)は進行が非常に速く、発見が遅れると命に関わる病気です。胃固定術は、胃を周囲の組織に固定することで、この病気の発症そのものを防ぐ(予防的)、あるいは一度治療した後の再発を防ぐ(治療の一部として)ために行う手術です。

このページでは、対象となる犬・時期・避妊手術との同時実施・手術の方法や時間・入院・費用について、腹腔鏡による胃固定術を中心にご説明します。GDVそのものについて(原因・好発犬種・すぐに受診が必要なサイン)は、胃捻転拡張症候群(GDV)の解説ページで詳しくご紹介しています。

当院の腹腔鏡下胃固定術について
  • 予防的な胃固定術は、都市部では発生数自体が多くないため、実施件数としては年に数件程度です
  • 近年はほぼすべて完全腹腔鏡下で行っています(お腹を切開せず、小さな穴のみで行う方法です)
  • 胃固定術単独の手術時間は、おおよそ30〜45分です
  • 全身状態が落ち着いていれば、日帰りでの対応がほとんどです
  • 避妊・去勢手術との同時実施にも対応しています

胃固定術の目的 —— 予防として行う場合と、治療の一部として行う場合

①正常な胃の位置。②GDV:胃が拡張し、時計回りに回転します(十二指腸側が食道の背側を通って反対側へ移動)。③胃固定術後:胃の出口に近い部分(幽門洞)を右側の腹壁に固定することで、拡張することはあっても再び回転できなくなります ※模式図です

胃固定術には、大きく2つの目的があります。1つは、まだ発症していない段階で行う予防的な胃固定術です。GDVを発症しやすいとされる犬種・体格の犬に対して、発症する前に胃を固定しておく手術で、多くは避妊・去勢手術と同時に行われます(詳しくは後述)。もう1つは、GDVの治療の一部として行う再発予防のための胃固定術です。GDVを発症して緊急手術(胃を元の位置に戻す整復)を行う際、その場で胃固定術も併せて行うのが標準的な治療です。胃固定を行わずに整復のみを行うと、再びねじれる(再発する)リスクが高いことがわかっています。

海外の報告では、胃固定術を行った犬は行わなかった犬に比べて、死亡につながるリスクが2.2倍から29.6倍(状況により異なる)低いとされています(Ward et al., 2003)。

予防的に行う対象の目安 —— 犬種・体格

GDVの発症リスクは、犬種や体格によって大きく異なります。海外の報告(Ward et al., 2003)では、犬種別の生涯発症リスクにロットワイラーで3.9%からグレートデーンで36.7%という幅があることが示されています。また、より新しい大規模調査(McCord et al., 2025、北米47,444頭)では、純血種・オス・体重40kg超・低BCS(痩せ気味)・プードル系の犬種で発症リスクが高いことが報告されています。一方でこの調査では、食事の内容や回数、不安・恐怖行動の有無、避妊去勢の有無や時期は、リスクと関連していませんでした。

これらの数値は海外での調査結果であり、犬種の構成や体格は国内と異なる部分もあります。数値をそのまま当てはめるのではなく、実際の犬種・体格・年齢などをふまえて、予防的な胃固定術を検討する価値があるかどうかを個別にご相談させてください。

避妊・去勢手術との同時実施について

GDVの発症リスクが高いとされる犬種の場合、避妊・去勢手術と同時に予防的な胃固定術を行うことをおすすめしています。1回の麻酔で両方の手術を終えられるため、麻酔や入院の回数を増やさずに予防できるという利点があります。

海外の報告では、腹腔鏡下での卵巣摘出術と完全腹腔鏡下の胃固定術を同時に行った場合、合計の手術時間はおよそ29分(卵巣摘出術が約7.5分・胃固定術が約9.3分)だったとされ、重大な合併症の報告もありませんでした(Guadalupi et al., 2025)。当院でも同様の同時実施に対応していますが、実際の手術時間は体格や個々の状態によって変わるため、事前の診察でご説明します。

手術の方法 —— 完全腹腔鏡下胃固定術

当院では、近年ほぼすべての胃固定術を完全腹腔鏡下で行っています。お腹を大きく切開する開腹手術とは異なり、お腹に数か所、小さな穴をあけるだけで胃を固定します。傷が小さいぶん、術後の痛みや回復への負担を抑えられます。

胃固定術には、大きく分けて3つの方法があります。開腹手術はお腹を大きく切開して行う従来からの方法です。腹腔鏡補助下胃固定術は、腹腔鏡でお腹の中を確認しながら、小さな傷から胃を少し引き出して固定する方法です。完全腹腔鏡下胃固定術は、お腹を切開せず、数か所の小さな穴だけで、お腹の中で胃の固定まで完結させる方法です。

開腹手術・腹腔鏡補助下胃固定術・完全腹腔鏡下胃固定術の傷の大きさの比較。犬は仰向け、 左から開腹手術・腹腔鏡補助下胃固定術・完全腹腔鏡下胃固定術の順に並ぶ。 開腹手術は約20cmの正中切開、腹腔鏡補助下胃固定術は右の肋骨近くに斜め約7cmの切開

当院で中心に行っているのは完全腹腔鏡下胃固定術で、傷そのものがなく、5〜10mm程度の小さな穴が数か所あくのみです。腹腔鏡補助下胃固定術(右の肋骨から少し離れた位置に、斜め方向の傷を1か所・約7cm作る方法)は、当院で実施する機会は多くありませんが、選択肢の一つとしてご紹介しています。開腹手術ではお腹を大きく切開するため、傷はおよそ20cmになります。海外の報告(ビーグルによる比較試験)でも、腹腔鏡補助下胃固定術の傷は開腹手術のおよそ3分の1だったとされており(Haraguchi et al., 2017)、この比率は当院での実際の傷の大きさの違いともよく一致しています。

腹腔鏡補助下胃固定術には、完全腹腔鏡下胃固定術に比べて費用を抑えやすいという利点があります。完全腹腔鏡下では固定に特殊な縫合材料を使うためその分コストがかかりますが、腹腔鏡補助下ではこれを抑えられます。一方で、傷口がまれに炎症を起こすことがある点には注意が必要です。どちらが向いているかは、体格や、費用を抑えたいか傷をより小さくしたいかといったご希望によっても異なりますので、その子の状態に応じて個別にご提案しています。

予防的な胃固定術は、まだ症状のない、元気な子に行う手術です。「これから何も問題がないのに、お腹を大きく切る手術をさせるのは気が引ける」と感じられる飼い主さんも少なくありません。腹腔鏡を使うことで、この負担を大きく減らすことができます。将来の緊急手術のリスクを考えたとき、傷の小さい方法で早めに備えておくという選択肢として、腹腔鏡下胃固定術をご検討いただければと思います。

胃固定術単独の手術時間はおおよそ30〜45分です。全身状態が落ち着いていれば、日帰りでの対応がほとんどです。避妊・去勢手術と同時に行う場合は、その分手術時間が延びます。

手術の効果とリスク

予防的な完全腹腔鏡下胃固定術を受けた44頭を追跡した海外の報告では、追跡期間の中央値522日(およそ1年半)の間にGDVの発症は1件も確認されませんでした。すべての飼い主が手術の結果に満足していたとも報告されています(Fairfield et al., 2023)。

一方で、別の海外の報告(警察犬370頭を対象)では、予防的胃固定術を受けた犬で、腸間膜捻転という別の合併症がやや増える可能性が示されています(統計的に明確な差ではありませんでした)。ただしこの報告の著者らも、それを踏まえたうえで予防的胃固定術を推奨すると結論づけています(Fruehwald et al., 2024)。どのような手術にも一定のリスクは伴いますが、GDVそのものの死亡リスクの高さと比べたうえで、当院でも予防的胃固定術をおすすめしています。

費用について

腹腔鏡下胃固定術の費用は、避妊・去勢手術と同時に行うかどうか、体格、全身状態などによって変わります。診察と検査の結果をふまえて、手術前に必ずお見積りをご提示します。おおよその費用感については、ご来院前でもお電話やサイト内のAIチャットでお答えできますので、お気軽にお尋ねください。

ペット保険について

GDVの治療の一部として行う胃固定術(緊急手術時など)は、ペット保険の補償対象となることが一般的です。一方、まだ発症していない段階で行う予防的な胃固定術は、保険会社やご加入のプランによって補償の対象外となる場合があります。ご加入のプランでの取り扱いについては、事前に保険会社へご確認いただくか、診察時にご相談ください。

保険が適用される場合、アニコム損保・アイペット損保にご加入の方は窓口精算に対応しています。お支払いの時点で保険が適用されるため、いったん全額を立て替えて後日ご請求いただく必要はありません。ご来院の際は保険証をお持ちください。

よくあるご質問

Q. GDVを発症してから手術する場合と、予防的に行う場合とでは何が違いますか?

GDVを発症してからの手術は、緊急かつ全身状態が悪化した中で行う救命目的の手術になります。一方、予防的な胃固定術は、全身状態が落ち着いた計画的な手術として行えるため、安全性の面でも負担の面でも、あらかじめ行っておくほうが少ない負担で済むことが多いです。

Q. 避妊・去勢手術と同時に受けられますか?

対応しています。GDVの発症リスクが高いとされる犬種・体格の場合は、同時実施をおすすめすることがあります。対象になるかどうかは、犬種・体格・年齢などをふまえて個別にご相談させてください。

Q. 入院は必要ですか?

胃固定術単独の場合、全身状態が落ち着いていれば日帰りでの対応がほとんどです。避妊・去勢手術との同時実施や、全身状態によっては入院をご案内することもあります。

Q. 高齢の犬でも手術は受けられますか?

年齢だけを理由に手術を避けるわけではありません。持病がある場合や麻酔にリスクがある場合も、麻酔科医の管理下で麻酔を行っています。まずは検査の結果とリスクをあわせてご相談させてください。

Q. 手術のリスクはありますか?

全身麻酔と手術を伴う以上、リスクがまったくないわけではありません。海外の報告では、予防的胃固定術後にまれに別の合併症(腸間膜捻転)が起こる可能性も指摘されていますが、報告した著者ら自身も、それを踏まえたうえで予防的胃固定術をすすめています(Fruehwald et al., 2024)。ご不安な点は、手術前に遠慮なくお尋ねください。

参考文献

  • McCord AM, et al. (2025) J Am Vet Med Assoc. Dog Aging Project コホートによる胃拡張捻転症候群のリスク因子解析(47,444頭)。論文はこちら
  • Guadalupi A, et al. (2025) Animals 15(15):2205. 腹腔鏡下卵巣摘出術と完全腹腔鏡下胃固定術の同時実施。論文はこちら
  • Ward MP, et al. (2003) Prev Vet Med 60(4):319-329. 犬種別のGDV発症リスクと予防的胃固定術の費用対効果。論文はこちら
  • Fairfield SA, et al. (2023) Can Vet J 64(8):761-766. 予防的完全腹腔鏡下胃固定術44頭の追跡調査。論文はこちら
  • Fruehwald AM, et al. (2024) J Am Vet Med Assoc. 警察犬における予防的胃固定術後の合併症。論文はこちら
  • Haraguchi T, et al. (2017) J Vet Med Sci 79(9):1524-1531. 腹腔鏡補助下胃固定術と開腹胃固定術の術後疼痛・炎症反応・傷の大きさの比較。論文はこちら

GDVそのもの(原因・好発犬種・すぐに受診が必要なサイン)については、「胃捻転拡張症候群(GDV)とは」のページで詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

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はじめてご来院の方は 初診の患者さんへのご案内 もあわせてご覧ください。初診問診票を事前にご記入いただくと、当日の受付がスムーズです。

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