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クウ動物病院 動物内視鏡医療センター  TEL: 06-6967-8668
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外科 #子宮蓄膿症 #卵巣子宮摘出術 #腹腔鏡

犬の子宮蓄膿症、すぐに手術すべきか——全身状態を優先する当院の考えと腹腔鏡手術

公開日: 2026年9月吉日 / 執筆・監修: クウ動物病院 動物内視鏡医療センター

今すぐ手術をするかどうか

正常な卵巣子宮・子宮内膜炎・子宮蓄膿症の比較イラスト

※イメージ図です

昨日まで普通に過ごしていた子が、急に「子宮に膿がたまっている」「命に関わる」「できれば今日中に手術を」——子宮蓄膿症は、そういう形で始まることの多い病気です。急に言われても、すぐには決められない。頭が真っ白になってしまう。当然のことだと思います。

まずお伝えしたいのは、この判断を、飼い主様おひとりで背負っていただく必要はないということです。手術をするのか、するとしたらいつなのか、どの方法で行うのか。私たちがその子の状態を評価し、分かったことをご説明したうえで、ご一緒に決めていきます。

子宮蓄膿症は、避妊手術を受けていない犬の子宮に細菌が増え、膿がたまる病気です。多くは発情から1〜2か月ほど経った時期に起こります。放置すれば細菌の毒素と炎症が全身に広がり、命に関わります。治療が必要な病気であることに、議論の余地はありません。

だからこそ、診断がついたその日のうちに手術へ進むという考え方は、広く行われてきた妥当な方針です。ただ、近年になって、その「すぐに」を問い直す報告が出てきています。2026年に発表された犬137例の研究では、来院から6時間以内に手術した群と、6時間以上かけて状態を整えてから手術した群とで、退院までの生存率に差は認められませんでした(Durocher et al., 2026)。

当院の答えを先に書きます。急ぐかどうかは、その子の全身状態を見て決めています。

  • 全身状態が安定していれば、早期に手術します。待つ理由がないためです
  • 血圧が低い、血のめぐりが悪いなど不安定であれば、まず整えてから手術します。おおむね12〜48時間の内科治療を経て手術に進みます

「すぐ切る」でも「待つ」でもありません。急ぐかどうかを、印象ではなくその子の全身状態で判断し、その根拠を飼い主様と共有したうえで一緒に決める——これが当院の考え方です。このページでは、その理由と、腹腔鏡でできることをご説明します。

こんなときは、様子を見ずにご相談ください

避妊手術を受けていない犬で、発情から1〜2か月の時期に次のような変化があれば、子宮蓄膿症の可能性があります。

  • 水をよく飲み、おしっこの量が増えた
  • 陰部から膿や血の混じったものが出ている
  • 陰部を頻繁に舐める
  • 元気がない、食欲がない
  • 発熱、嘔吐
  • お腹が張ってきた

早い段階で受診いただけるほど、選べる治療の幅が広がります。手術の準備を整える時間も確保でき、後述する腹腔鏡という選択肢も検討しやすくなります。

「膿が出ていないほうが危険」は、半分正しい

閉鎖性と開放性の子宮蓄膿症の断面比較イラスト

※イメージ図です

子宮の出口(子宮頸管)が閉じていて膿が外に出てこないタイプ(閉鎖性)のほうが危険だ、とよく言われます。これは半分正しく、半分は正確ではありません。

犬111例を調べた報告では、閉鎖性の犬は来院した時点での状態が確かに重い傾向がありました。炎症が全身に広がっている割合は閉鎖性で77%、開放性で51%。白血球の増加や全身状態の悪化も閉鎖性で多くみられました。ところが、その後の経過(術後の入院期間)には差がなく、この研究で亡くなった5例はすべて開放性の犬でした(Jitpean et al., 2017)。

つまり、膿が外に出ているかどうかで安心も心配もできません。見た目のタイプではなく、その子の全身状態が今どうなっているか——これが判断の軸になります。

なぜ、”慌てない”のか

炎症が子宮の中だけにとどまらず、全身に広がってしまうことがあります(全身性炎症反応症候群、SIRSと呼ばれる状態です)。こうなると血圧が下がり、臓器への血のめぐりが悪くなります。

この状態のまま手術に踏み切ると、麻酔や手術そのものが体にさらに負担をかけ、体が持ちこたえられないことがあります。だから当院では、循環の改善と、行き過ぎた炎症を抑えることを先に行います。輸液や薬剤の投与で状態を整えてから、手術に進みます。

冒頭で触れた2026年の報告を、もう少し詳しくご紹介します。3施設で犬137例を調べた研究です。来院から6時間以内に手術した群と、6時間以上かけて状態を整えてから手術した群を比べたところ、退院までの生存率に差は認められませんでした。手術時間・麻酔時間・術後の入院期間にも差はなく、開放性と閉鎖性の間でも、評価したすべての項目で差はありませんでした(Durocher et al., 2026)。

この研究で状態を整えるためにかけられた時間は、平均で9.3時間、長い例では3日を超えていました。当院が必要と判断する12〜48時間という時間も、この範囲に含まれます。

同じ考え方への転換は、子宮蓄膿症だけで起きているわけではありません。かつて「すぐに手術を」とされていた胃拡張捻転症候群や消化管異物、腹腔内出血でも、近年は「急を要するが、その場で切らなければならないわけではない」と捉え直す流れがあります。人の医療でも、虫垂炎の手術を遅らせた場合に緊急手術と比べて結果が劣らず、むしろ術後の合併症が減ったという報告があります。

逆に、待たずに手術する場合

すべての子宮蓄膿症で時間をかけるわけではありません。

先ほどの犬137例の研究では、お腹の中に膿が漏れて腹膜炎を起こしていた犬は、全例がすぐに手術を受けています。著者らも、命に関わる合併症が疑われる場合には速やかな手術が必要だと述べています(Durocher et al., 2026)。

子宮が破れている、腹膜炎を起こしている、といった状況では、待つことがそのまま不利益になります。また、内科治療の間に状態が悪化した場合も、予定を前倒しします。当院が見ているのは時計ではなく、その子の状態です。

内科治療の間、どう過ごすのか

手術までの内科治療の間、どのように過ごしていただくかは、その子の状態によって変わります。通院していただきながら日中だけお預かりする形(半日入院)で対応できることもあれば、継続した管理が必要で入院していただくこともあります。

状態だけでなく、その子の性格も考えて決めています。入院そのものが強いストレスになる子もいるためです。どちらが適しているかは、診察のうえでご相談させてください。

手術——腹腔鏡でできること

腹腔鏡下卵巣子宮摘出術のポート跡のイラスト

※イメージ図です

子宮蓄膿症の手術は、卵巣と子宮を摘出する「卵巣子宮摘出術」です。従来はお腹を大きく切開する開腹手術で行われてきましたが、当院では腹腔鏡(内視鏡)を用いた手術にも対応しています。

海外では、犬12例に対して3箇所の穴から行う腹腔鏡補助下の卵巣子宮摘出術を実施した報告があります。手術時間の中央値は107分で、全例が回復して退院しました。ただし、この報告では12例のうち1例で、手術中に子宮が破れてしまい開腹手術へ移行しています。著者らは「症例の選択が必須である」と述べており、対象としたのも子宮の直径が1〜4cmで、穿孔の所見がない犬に限られていました(Adamovich-Rippe et al., 2013)。

膿がたまった子宮は伸びきって破れやすくなっています。手術中に破れれば、腹腔内に膿が漏れて状況を悪化させます。だからこそ、どの症例に腹腔鏡が適しているかの見極めが要になります。

当院では、動物の大きさと子宮の大きさをもとに、開腹か腹腔鏡かを判断しています。拡張しすぎた子宮の場合は、はじめから開腹手術を選びます。そのため、手術の途中で腹腔鏡から開腹に切り替えることは多くありません。これは技術というより、手術前の見極めの結果です。

どちらの方法で行うかは、想定される手術時間とその子の状態をふまえて、飼い主様とご相談のうえで決めています。

術後の経過

入院期間は全身状態によって変わります。安定した状態で手術を受けられた場合は、日帰りで対応できることもあります。一方、手術前から状態が悪かった場合には、術後も入院での管理が必要になります。

手術費用について

手術費用は、手術前の内科治療の期間、開腹か腹腔鏡か、入院日数など、その時の状況によって変わります。診察と検査の結果をふまえて、事前にお見積りをご提示します。おおよその費用感については、ご来院前でもお電話やサイト内のAIチャットでお答えできますので、お気軽にお尋ねください。

ペット保険をご利用いただけます。本手術はペット保険の補償対象となります。ただし、補償割合や手術1回あたりの限度額はご加入のプランによって異なり、費用の全額が補償されるとは限りません。実際にどのくらいご負担いただくことになりそうかは、お見積りの際にあわせてご説明します。

また、アニコム損保・アイペット損保にご加入の場合は窓口精算に対応しています。お支払いの時点で保険が適用されるため、いったん全額を立て替えて後日ご請求いただく必要はありません。ご来院の際は保険証をお持ちください。

当院の対応

大阪市鶴見区のクウ動物病院 動物内視鏡医療センターでは、子宮蓄膿症の診断から、全身状態に応じた内科治療、腹腔鏡による卵巣子宮摘出術まで対応しています。他院で子宮蓄膿症を疑われてご紹介いただくケースもあります。かかりつけの病院で指摘された、手術の方法や時期について相談したい、という場合もご相談ください。

参考文献

  • Durocher E, Windsor R, Smola C. (2026) J Am Vet Med Assoc 264(9):1190-1194. 犬137例における子宮蓄膿症手術のタイミングと転帰の検討。即時手術の明確な優位性は認められなかった。論文はこちら
  • Jitpean S, Ambrosen A, Emanuelson U, Hagman R. (2017) BMC Vet Res 13(1):11. 犬111例における開放性・閉鎖性子宮蓄膿症の重症度と転帰の比較。論文はこちら
  • Adamovich-Rippe KN, Mayhew PD, Runge JJ, et al. (2013) Vet Surg 42(5):572-8. 犬12例に対する3ポートの腹腔鏡補助下卵巣子宮摘出術の評価。論文はこちら
  • Stastny T, Koenigshof AM, Brado GE, et al. (2021) J Vet Emerg Crit Care 32(1):68-74. 外科的治療を要した敗血症の犬204例における重症度スコアの予後予測能。論文はこちら

当院でのご相談

子宮蓄膿症と診断された、あるいは疑いを指摘された、という場合はご相談ください。その子の状態を評価したうえで、手術の時期と方法についてご説明します。

はじめてご来院の方は 初診の患者さんへのご案内 もあわせてご覧ください。初診問診票を事前にご記入いただくと、当日の受付がスムーズです。

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