犬の血尿・排尿異常——尿道結石は細径内視鏡で日帰り摘出できることも
公開日: 2026年9月吉日 / 執筆・監修: クウ動物病院 動物内視鏡医療センター
血尿・排尿異常が続く犬——結石が尿道に詰まっていたら
血尿が出る、おしっこの様子がおかしい。そう言って来院される犬の中に、膀胱にあった結石が尿道へ移動し、そこで詰まってしまっているケースがあります。
膀胱結石そのものについては、当院の膀胱結石の手術のページで詳しくご説明していますが、結石が尿道まで移動して詰まった場合は、膀胱の中にとどまっている場合とは対応が変わります。このページでは、尿道に詰まった結石にどう対応するか、当院で行っている細径内視鏡による摘出を中心にご説明します。
- 血尿が出ている
- おしっこの回数が増えた、少しずつしか出ない
- トイレの姿勢はとるのに、おしっこがほとんど・まったく出ない
- 以前から膀胱結石を指摘されている
- お腹を痛がる様子がある、元気や食欲がない
とくに「トイレの姿勢はとるのに出ない」という様子は、緊急性が高いサインです。様子を見ずにすぐにご連絡ください。
なぜ、詰まると危険なのか
尿は腎臓で作られ、膀胱にためられたあと、尿道を通って体外に排出されます。この尿道の途中に結石が詰まってしまうと、おしっこを出すことができなくなります。
※模式図です
血尿が出るのにも理由があります。尿道結石は、表面が金平糖のように尖った形をしていることが多く、この尖った部分が尿道の粘膜に食い込むことで出血や強い痛みが生じます。「血尿が出ている」というのは、結石が粘膜を傷つけているサインでもあります。
おしっこが出せない状態が続くと、本来体の外に出るはずの老廃物や電解質が体内にたまり続けます。これが進むと、全身状態が急激に悪化し、命に関わる状態になることがあります。「様子を見ているうちに何とか出るようになるだろう」と考えず、早めにご相談いただくことが大切です。
また、結石は尿道の中でさらに奥へと降りてくることがあり、時間がたつほど対応が難しくなることがあります。血尿や排尿の異常に気づいた時点で、できるだけ早めにご相談いただくことをお勧めしています。
なぜ、詰まりやすい犬とそうでない犬がいるのか
結石が尿道に詰まるかどうかは、結石の大きさと、尿道の太さの兼ね合いで決まります。とくに影響が大きいのが性別です。
雄の尿道は雌に比べて細長く、結石が詰まりやすい構造をしています。犬25例にレーザーで結石を砕く治療を行った報告でも、去勢雄は避妊雌に比べて治療の成功率が低く、時間もかかりました(Grant et al., 2008)。同じ結石でも、雄のほうが対応の難易度が上がると考えていただいて差し支えありません。
診断——まずはレントゲン
血尿や排尿の異常でご来院いただいた場合、まずレントゲン検査を行います。結石の位置(膀胱の中にあるか、尿道まで移動しているか)や、大きさ・数を確認します。以前から膀胱結石を指摘されていた犬が、今回は結石が尿道まで移動していた、というケースも少なくありません。
治療——細径内視鏡による経尿道的な摘出
尿道に詰まった結石が小さい場合、お腹を切開せず、尿道から細い内視鏡を入れて結石を直接確認しながら摘出する方法があります。当院で使用しているのは直径2.5〜2.8mmの細径内視鏡で、太さの目安としては、たこ焼き用の楊枝(直径2.5mm程度)とほぼ同じくらいとイメージいただければと思います。この中を通す形で、さらに細い1.2mmのバスケット鉗子(結石をかごのようにとらえる器具)を使い、結石をつかんで取り出します。
※実際の内視鏡画像です
実際の処置は、鎮静をかけたうえで行います。内視鏡の細い通路(チャンネル)から水を送り込んで尿道の中に適度な水圧をかけ、結石を浮かせたり動かしたりしながら、その水流を利用してバスケット鉗子で確実にとらえます。体の外側から押し出そうとする方法と違い、内視鏡でその場を直接見ながら行えることが特徴です。
※実際の処置中の内視鏡画像です
この内視鏡が入る太さがあれば、そのまま膀胱の中まで進めて、膀胱結石の摘出にも使うことができます。ただし膀胱結石の数が多い場合や、膀胱側の結石も一緒に取り除きたい場合には、腹腔鏡を組み合わせて対応しています。尿道からの摘出と腹腔鏡下での摘出を組み合わせることで、開腹手術によらない低侵襲な形で両方の結石に対応できます。
海外の報告でも、この方法の有効性が示されています。犬12例に経尿道的な内視鏡摘出を行った報告では、13回の手技のうち8回が経尿道アプローチのみで完結し、所要時間の中央値は36分、13回中12回で結石を完全に摘出できました(Shamoun et al., 2025)。
また、開腹手術のあとに内視鏡で尿道内を確認することの有用性を調べた報告では、術後の造影検査より内視鏡による確認のほうが速く(中央値5.5分 対 25分)、造影検査で確認した群では、取り残された結石が術後50日で尿道に詰まってしまった例がありました。内視鏡で確認した群では、そうした術後の閉塞は起きていません(Litviakov et al., 2025)。内視鏡で直接見ながら確認・摘出できることは、取り残しを防ぐうえでも意味があります。
すべての結石に使えるわけではありません
細径内視鏡による経尿道的な摘出を選べるかどうかは、体格(体重・尿道の太さ)、結石の大きさ、結石の位置、そして性別で判断しています。目安としては、先ほどの2.5〜2.8mmの内視鏡が無理なく通る太さの尿道があるかどうかが一つの基準になります。結石が大きすぎる場合や、体格に対して尿道が細い場合には、この方法が適さないことがあります。
尿道結石の除去には、このほかにもいくつかの方法が知られています。
- 開腹して尿道を切開する方法——確実ですが、体への負担は大きくなります
- 体の外から結石を膀胱側へ押し戻す方法——内視鏡を使わず、見えない状態で行う方法です
- レーザーで結石を砕く方法——大きな結石に有効ですが、去勢雄では時間がかかりやすいと報告されています(Grant et al., 2008)
- 当院で行っている、内視鏡による経尿道的な摘出——結石を直接見ながら摘出でき、開腹を避けられます
とくに、見えない状態で結石を押し戻す方法にはリスクがあります。犬猫を対象にした報告では、雄猫の1例で、膀胱に戻した結石が尿道で再び詰まってしまい、最終的に手術での摘出が必要になったケースが報告されています(Lulich et al., 1993)。当院で行っている方法は、内視鏡でその場を直接見ながら水圧と鉗子を使う点が異なり、見えない状態で押し戻す方法とは区別してお考えください。
実際の症例
血尿とおしっこの異常で来院され、レントゲンで結石が尿道まで移動していることが分かった犬の症例があります。結石が小さかったため細径内視鏡で経尿道的に摘出し、膀胱に残っていた結石は腹腔鏡下で摘出しました。レントゲン画像を含む詳しい経過は、こちらの症例記事でご紹介しています。
入院・費用について
尿道の結石のみを摘出する場合は日帰りで、膀胱結石の摘出を伴う場合は当日または翌日のご退院が目安です。全身状態によって前後することがあります。
費用は、結石の大きさ・位置、膀胱結石の摘出を伴うかどうか、入院日数などによって変わります。診察と検査の結果をふまえて、事前にお見積りをご提示します。おおよその費用感については、ご来院前でもお電話やサイト内のAIチャットでお答えできますので、お気軽にお尋ねください。
ペット保険をご利用いただけます。ただし、補償割合や手術1回あたりの限度額はご加入のプランによって異なり、費用の全額が補償されるとは限りません。アニコム損保・アイペット損保にご加入の場合は窓口精算にも対応しています。
当院の対応
大阪市鶴見区のクウ動物病院 動物内視鏡医療センターでは、レントゲンによる診断から、細径内視鏡による経尿道的な結石摘出、必要に応じた腹腔鏡下での膀胱結石摘出まで対応しています。膀胱結石を指摘されている犬で血尿や排尿の異常がみられた場合は、様子を見ずにご相談ください。膀胱結石そのものについてはこちらのページもあわせてご覧ください。
参考文献
- Grant DC, Werre SR, Gevedon ML. (2008) J Vet Intern Med 22(3):534-9. 犬25例におけるホルミウムYAGレーザー砕石術の成績と性差。論文はこちら
- Litviakov M, Winter J, Rossanese M. (2025) J Am Vet Med Assoc 263(7):1-7. 犬54例における術中尿道膀胱鏡と術後造影検査の比較。論文はこちら
- Shamoun J, Vaden SL, Kendall AR, Secoura PL. (2025) J Vet Intern Med 39(1):e17280. 犬12例におけるEllik吸引器を用いた経尿道的内視鏡下結石摘出。
- Lulich JP, Osborne CA, Carlson M, et al. (1993) J Am Vet Med Assoc 203(5):660-3. 犬猫における排尿性尿路水圧法による膀胱結石の非外科的除去。
当院でのご相談
血尿がある、おしっこの様子がおかしい、以前から膀胱結石を指摘されている、という場合はご相談ください。検査の結果をもとに、適した摘出方法をご提案します。
はじめてご来院の方は 初診の患者さんへのご案内 もあわせてご覧ください。初診問診票を事前にご記入いただくと、当日の受付がスムーズです。
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