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クウ動物病院 動物内視鏡医療センター  TEL: 06-6967-8668
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外科 #腹腔鏡下避妊手術 #猫 #腹腔鏡

猫の腹腔鏡下避妊手術——犬とは違う理由で考える

公開日: 2026年9月吉日 / 執筆・監修: クウ動物病院 動物内視鏡医療センター

猫の避妊手術、犬とどう違うのか

猫の避妊手術は、犬の避妊手術とは考え方が異なります。同じ内視鏡(腹腔鏡)を使った手術でも、猫には猫固有の理由があります。まず結論から整理します。

  • 子宮蓄膿症の生涯リスクは、犬(10歳までに23〜24%)に比べると猫は低い(年間で猫10,000頭あたりおよそ17頭)が、ゼロではない
  • 猫は誘起排卵の動物とされてきたが、雄との接触がなくても自然に排卵することがある
  • 乳腺腫瘍の予防効果は、避妊手術を受けた年齢によって差が大きい(別記事で詳しく解説)
  • 犬でみられる「避妊の時期」をめぐる議論は、猫では同じようには見当たらない

つまり、猫の避妊手術は「犬の避妊手術を猫に当てはめたもの」ではなく、猫という動物の特徴にあわせて考える必要があります。以下、当院で行っている腹腔鏡下避妊手術について、方法から適応、当日の流れまでご説明します。

猫の腹腔鏡下避妊手術とは

猫においても犬と同様に、内視鏡(腹腔鏡)を用いて不妊化手術を行うことが可能です。一般的に3〜5mmの傷が3箇所で手術を行います。手術の方法は犬と同様で、術式に差はありません。

開腹手術でも、猫の手術の傷はあまり大きくせずに行うことは可能です。卵巣摘出術であれば数センチも切ることなくできることもあります。ただ、手術の痛みは傷の大きさだけで決まるわけではありません。開腹手術において小さな傷で行ったとしても、猫の卵巣を体外に取り出すためには引っ張り出さなくてはなりません。その痛みは術後の負担に十分になり得ます。

近年、腹腔鏡下避妊手術を選択される猫の飼い主さんが増えています。室内飼育が主流になり、猫の生活環境が変化していることに加え、猫においても病気の予防や管理という意味で不妊化手術を行った方がよいという認識が広がってきたためと考えられます。少しでも猫の負担を減らして手術を受けさせてあげたいという飼い主さんが増えたことも、腹腔鏡手術が選ばれている理由のひとつです。

開腹手術と腹腔鏡手術の痛みの違い

猫も避妊手術後に痛みを感じます。腹腔鏡で不妊化手術を行った後の痛みを、開腹手術と比べた報告があります。猫60頭を、お腹の正中を切開する開腹手術・脇腹を切開する開腹手術・腹腔鏡手術の3つに分けて、手術後12時間まで繰り返し痛みを評価した研究です。2種類の開腹手術はいずれも腹腔鏡手術より痛みの点数が高く、強い痛みを示した猫が時点によって5〜20%いました。一方、腹腔鏡手術ではそうした猫は1頭もいませんでした(Gauthierら, 2014)。

近年の報告でも同じ傾向が確認されています。猫27頭を2種類の開腹手術と腹腔鏡手術に分けて比べた2026年の研究では、手術のあとに痛み止めを追加する必要があった猫は、開腹手術ではそれぞれ9頭中7頭だったのに対し、腹腔鏡手術では9頭中1頭でした(Guadalupiら, 2026)。

術式別の追加鎮痛薬使用率の比較グラフ

この研究は各群9頭ずつと規模は大きくありませんが、傾向としては先ほどの猫60頭の報告と一致しています。

正直なところ、腹腔鏡にも弱いところがあります

腹腔鏡の良いところばかりを挙げましたが、弱いところもあります。お選びいただく前に知っておいていただきたいと思います。

ひとつは、腹腔鏡には慣れるまでの経験が必要だという点です。開腹手術より習熟に時間がかかり、経験の少ないうちは手術時間が長くなります。先ほどの猫60頭の報告でも、著者は腹腔鏡のほうが時間がかかると述べています(Gauthierら, 2014)。麻酔の時間が延びること自体は、負担が増える方向に働きます。

ただしこれは、術者とチームがどれだけ慣れているかによって変わります。手術時間が開腹より長かったという先ほどの報告でも、執刀医が一人で手術を行っており、著者は助手がつく施設であればより短い時間で行えるだろうと述べています(Caseら, 2014)。

当院は10年以上にわたって内視鏡手術に取り組み、内視鏡手術全体でこれまでに1,000件以上を行ってきました。手術は院長とベテランスタッフによるチームで行います。

もうひとつは、お腹の中を炭酸ガスでふくらませて手術するという点です。猫24頭で心臓と肺への影響を調べた報告では、ふくらませている時間が長いほど影響は大きくなりました。ただしその影響はいずれも一時的なもので、麻酔が終わるまでに回復しています(Shihら, 2014)。健康な猫6頭で気腹の圧を3段階に分けて比較した報告では、8mmHgを超えても手術のための視野やスペースは有意には広がらず、15mmHgでは血圧の上昇や血液の酸性化がみられました。健康な猫で8mmHgを超える圧を使う根拠は乏しいとされています(Mayhewら, 2013)。

術後の炎症についても、正直にお伝えします。猫20頭を腹腔鏡下卵巣摘出と開腹手術(小開腹)に分けて比較した報告では、痛みのスコアには差がありませんでしたが、術後の炎症を示す血液の指標(好中球数やハプトグロビンという値)は、腹腔鏡群のほうが術後48〜72時間の時点でかえって高くなっていました(Conceiçãoら, 2018)。腹腔鏡だからといって、あらゆる面で体への負担が小さいとは限りません。

また、腹腔鏡であれば必ず痛みが少ない、というわけでもありません。傷を1か所にまとめる方法(単孔式)で行った報告では、開腹手術と痛みに差が出ませんでした(Coismanら, 2014)。痛みに差が出たのは、当院と同じように傷を2〜3か所に分ける方法で行った報告です。開腹手術には、手術時間が短く、特別な器具を必要としないという良さがあります。どちらがその子に向いているかは、状態やご家族のお考えによって変わります。

うちの子は受けられますか

猫でも犬と同じく、生後およそ半年以降、体重2kgほどが一つの目安になります。ただし成長の速さはその子によって違いますので、月齢や体重だけで決めるのではなく、体格を見てご相談させていただいています。

こんな場合もご相談ください
  • 発情が来ている
  • 年齢が高い
  • 体重が多め

これらの理由だけで、腹腔鏡の手術をお断りすることはありません。

猫14頭の報告でも、太っている猫で手術時間が長くなるということはありませんでした(van Nimwegenら, 2007)。ただし全身麻酔をかける手術ですので、事前の診察と血液検査で、その子が手術を受けられる状態かどうかを確認させていただきます。

猫だからこその配慮

室内飼育される猫では、ご家族以外の人間に触れる機会が少ない子もいます。キャリーやクレートに入ること自体を嫌がる猫も少なくありません。予防接種や定期的な血液検査など、どうしても避けられない場面はありますが、通院や処置に伴う苦痛を少しでも減らしたいという思いは、飼い主さんも当院も同じです。負担や痛みの少ない手術を行うことは、その助けになると考えています。

術後服(エリザベスウェア)を着た猫のイラスト

※イメージ図です

術後の管理としては、猫の患者さんにとって術後の痛みと同じくらい苦痛になり得るのがエリザベスカラーです。多くの猫はこれを嫌がります。当院では傷の管理として、カラーの代わりに術後服(エリザベスウェア)をお勧めしています。開腹手術に比べて腹腔鏡手術では傷は小さくなりますが、舐めてしまうと感染や炎症につながることがあるためです。猫の負担を少なくするために、患者さんの大きさに合わせたサイズをすべてご用意しています。

当日はどんな流れですか

猫の腹腔鏡下避妊手術も、犬と同じ流れで行っています。

  • 手術の前に一度ご来院ください。健康状態の確認と血液検査を行います(血液検査は手術の2週間以内にお願いしています)
  • 手術はほとんどの場合、日帰りです(全身状態によっては入院をお願いすることがあります)
  • 傷は3か所を縫合します。抜糸は1週間後にお願いしています
  • 退院後の消毒や包帯の交換は、基本的に必要ありません
  • 傷を舐めてしまわないよう、術後服をお勧めしています

検査の日と手術の日を分けているのは、手術当日では手術の内容や起こりうることを十分にご説明するお時間が取れないためです。

参考文献

  • Gauthier O, et al. (2014) Vet Surg 44(Suppl 1):23-30. 猫の腹腔鏡下不妊化手術における術後疼痛の比較。論文はこちら
  • Guadalupi M, et al. (2026) Vet Res Commun 50(2):97. 猫の避妊手術における術式間の疼痛比較。
  • Case JB, et al. (2014) J Am Anim Hosp Assoc 51(1):1-7. 腹腔鏡下卵巣摘出と開腹手術の比較。
  • Shih AC, et al. (2014) Vet Surg 44(Suppl 1):2-6. 猫における気腹の心肺への影響。
  • Mayhew PD, et al. (2013) Am J Vet Res 74(10):1340-1346. 猫における気腹圧と心肺機能・作業スペースの関係。論文はこちら
  • Conceição MEBAM, et al. (2018) Vet Rec 183(21):656. 猫の腹腔鏡下卵巣摘出と開腹手術における術後炎症マーカーと痛みの比較。論文はこちら
  • Coisman JG, et al. (2014) Vet Surg 43(1):38-44. 単孔式腹腔鏡下不妊化手術。
  • van Nimwegen SA, Kirpensteijn J. (2007) J Feline Med Surg 9(5):397-403. レーザーとバイポーラによる猫の腹腔鏡下卵巣摘出術。論文はこちら
  • Hagman R, et al. (2014) Theriogenology 82(1):114-120. スウェーデン保険データベースによる猫の子宮蓄膿症発生率。論文はこちら
  • Pereira MC, et al. (2024) J Feline Med Surg 26(7). 猫における自然排卵の頻度。論文はこちら

当院でのご相談

「腹腔鏡でできるのか」「うちの子でも大丈夫か」といったご相談は、診察としてお受けしています。実際に診させていただいたうえで、その子に合った方法をご提案します。

はじめてご来院の方は 初診の患者さんへのご案内 もあわせてご覧ください。初診問診票を事前にご記入いただくと、当日の受付がスムーズです。

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