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クウ動物病院 動物内視鏡医療センター  TEL: 06-6967-8668
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外科 #子宮角欠損 #猫 #腹腔鏡

猫の卵巣、本当に「ない」?——腹腔鏡で見つかった片側子宮角欠損

公開日: 2026年9月吉日 / 執筆・監修: クウ動物病院 動物内視鏡医療センター

避妊したのに発情する、卵巣が見つからないと言われたら

避妊手術を受けたはずなのに、発情の様子が続く。そう言われて来院された猫の症例をご紹介します。

この猫は1歳のときに動物病院で避妊手術(開腹による卵巣子宮摘出術)を受けていました。手術の際に片側の卵巣が確認できず、そのままになっていたとのことでした。もう片側の卵巣と子宮は摘出されましたが、その後も発情のような様子が続き、2歳になって当院を受診されました。

結論から言うと、卵巣は「無かった」わけではありませんでした。腹腔鏡で確認したところ、見つからなかった側の卵巣はきちんと存在しており、そこにつながる子宮角が生まれつき細くなっていたことが分かりました。

こんな場合はご相談ください
  • 避妊手術を受けたはずなのに、発情のような様子(大きな声で鳴き続ける、床に体をこすりつける、腰を上げる姿勢をとるなど)が続いている
  • その様子が、しばらく間をあけて周期的に繰り返される
  • 手術のときに「卵巣が見つからなかった」「片側だけ摘出した」と説明を受けている

卵巣が本当に無いのか、それとも見つけにくい形になっているだけなのかは、腹腔鏡でお腹の中を直接確認することで判断できます。

開腹手術で見つからなかった理由

開腹による避妊手術では、お腹を切って子宮を露出させ、その子宮角を先端までたどっていくことで卵巣を探します。子宮から卵巣まで、ひとつながりの道をたどるイメージです。

ところが、子宮角が生まれつき細い、あるいは途中で途切れているような場合、この「たどる道」がうまく見つかりません。道の先に卵巣があっても、道自体を見失ってしまえば、卵巣にたどり着けないのです。開腹手術で卵巣が確認できないのは、卵巣そのものが存在しないからではなく、そこへ至る子宮角が通常と違う形をしていることが原因の場合があると考えられます。

腹腔鏡なら、なぜ見つかるのか

腹腔鏡(内視鏡)による手術では、カメラをお腹の中に入れて、腹腔内を直接見ながら手術を進めます。子宮角をたどって卵巣を探すのではなく、カメラでお腹の中全体を見渡し、卵巣がある場所を直接視認するという探し方になります。

そのため、子宮角の形がどうであっても、卵巣そのものが存在してさえいれば見つけることができます。「道をたどる」開腹手術と、「部屋の中を見渡す」腹腔鏡手術との違いが、今回のようなケースでは結果の違いにつながります。

当院で実際に見つけたもの

腹腔鏡の写真をご覧いただく前に、まず卵巣・子宮角・子宮の位置関係を図でご説明します。卵巣から細い卵管が伸び、そこから明らかに太い子宮角へとつながります。左右の子宮角は中央で合流して1本の子宮体になり、その先が子宮頸につながっています。

猫の卵巣・子宮角・子宮の位置関係を示す解剖模式図

※模式図です

まず、参考として正常な卵巣と子宮角の様子をご覧ください(別の症例の腹腔鏡画像です)。

正常な猫の卵巣と子宮角の腹腔鏡画像(参考・別症例)

※参考画像です(今回の症例とは別の個体です)

卵巣から子宮角へと、はっきりした太さでつながっているのが分かります。通常はこのように、卵巣・子宮角・子宮本体がひとつながりの構造として確認できます。

これに対して、今回の症例で腹腔鏡から見えたのが次の画像です。

片側の子宮角が細くなっている状態の腹腔鏡画像(今回の症例)

※今回ご紹介している症例の実際の腹腔鏡画像です

卵巣は正常な位置にありましたが、そこから続く子宮角が、先ほどの正常な状態と比べて明らかに細くなっていました。開腹手術でこの細い子宮角をたどろうとしても、見失ってしまうのが分かるかと思います。

なお、子宮角の異常には程度の差があります。今回のように細くなっているケースもあれば、子宮角が生まれつきまったく形成されていない、より重いケースが報告されていることもあります。参考までに、その状態に近い別の症例の画像もご覧ください。

子宮角がほとんど形成されていない状態の腹腔鏡画像(参考・別症例)

※参考画像です(今回の症例とは別の個体です)

このように、子宮角が細い状態から、ほとんど形成されていない状態まで、程度にはさまざまな幅があります。いずれの場合も、開腹では見つけにくく、腹腔鏡であれば卵巣の有無を直接確認できるという点は共通しています。今回の症例では、細くなった子宮角ごと、卵巣を摘出しました。なお、念のため反対側の腎臓も確認しましたが、問題はありませんでした。

この病態は、犬より猫に多い

子宮角の生まれつきの異常は、決してよくある病態ではありませんが、犬より猫のほうが多いことが分かっています。北米の動物病院で行われた避妊手術のうち、猫53,258例・犬32,660例を調べた大規模な報告では、片側の子宮角がほとんど形成されていなかった症例は、猫で15例、犬で3例でした。同じ調査から、泌尿生殖器の異常全体でみても、猫は犬のおよそ2倍の頻度で見つかっています。

同じ報告では、子宮に異常がある動物のほとんどで、卵巣そのものは両側とも存在していたことも示されています。今回の症例のロジック、つまり「子宮角に異常があっても、卵巣は存在していることが多い」という考え方は、この報告と一致しています。

海外でも報告されている、同じような状況

今回と似た状況は、海外でも症例報告として発表されています。以前に避妊手術を受けているのに発情のような様子が続いていた猫2例を調べた報告では、血液検査(抗ミュラー管ホルモンという、卵巣組織が残っているかどうかを調べる検査)で卵巣組織の存在が確認され、腹腔鏡による手術で摘出されています。当院の症例と、経緯・対応ともによく似た報告です。

このほかにも、子宮角の形成異常についての症例報告は複数発表されており、猫という動物種で一定数みられる病態であることがうかがえます。

避妊したのに発情が続く、卵巣が見つからないと言われた方へ

避妊手術を受けたはずなのに発情のような様子が続く、あるいは手術のときに「卵巣が見当たらなかった」と説明を受けた、という場合、卵巣が本当に存在しないのか、それとも今回のように見つけにくい形になっているだけなのかは、開腹だけでは判断が難しいことがあります。

腹腔鏡であれば、お腹の中を直接確認できるため、こうした状況の診断と治療の両方に対応できます。今回のようなケースに心当たりがある方は、セカンドオピニオンとしてご相談ください。

猫の腹腔鏡下避妊手術についての詳しい内容(方法・適応・よくあるご質問)は、こちらのページで解説しています。

参考文献

  • McIntyre RL, Levy JK, Roberts JF, Reep RL. (2010) J Am Vet Med Assoc 237(5):542-6. 猫53,258頭・犬32,660頭の選択的避妊手術における子宮の発生異常の頻度と特徴。論文はこちら
  • Puchalski DM, Ogilvie AT. (2022) Can Vet J 63(10):1022-1026. 子宮片角欠損(uterine unicornis)を有する猫2例に対する腹腔鏡下卵巣摘出術。
  • Dykeman D. (2020) Can Vet J 61(4):424-426. ラグドール猫における区域性子宮欠損と同側腎欠損の1例。
  • Goo MJ, Kim JH, Choi HJ, et al. (2008) J Feline Med Surg 11(2):153-5. ペルシャ猫における複合的な泌尿生殖器異常の1例。論文はこちら
  • Souther S, et al. (2019) Front Vet Sci 6:145. 猫における子宮・子宮頸・膣頭側の区域性欠損の1例。論文はこちら

当院でのご相談

避妊手術のあとも発情のような様子が続く、あるいは卵巣が見つからないと言われた、という場合はご相談ください。腹腔鏡による診断・治療の両方に対応しています。

はじめてご来院の方は 初診の患者さんへのご案内 もあわせてご覧ください。初診問診票を事前にご記入いただくと、当日の受付がスムーズです。

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