猫の尿道閉塞——おしっこが出ない、は緊急のサインです
公開日: 2026年9月吉日 / 執筆・監修: クウ動物病院 動物内視鏡医療センター
トイレの姿勢はとるのに、おしっこが出ていませんか
猫、とくにオス猫では、尿道が結晶やプラグ(粘液や炎症産物が固まったもの)で塞がれてしまい、おしっこがまったく出せなくなる「尿道閉塞」が起こることがあります。何度もトイレに行く、鳴きながらトイレに座る、お腹を触られるのを嫌がるといった様子は、そのサインであることがあります。
尿道閉塞は、対応が遅れると命に関わる緊急疾患です。「そのうち出るだろう」と様子を見ている時間が、状態を悪化させてしまうことがあります。このページでは、猫の尿道閉塞がなぜ起こるのか、当院でどのように対応しているかをご説明します。
- トイレの姿勢はとるのに、おしっこがほとんど・まったく出ない
- 何度も繰り返しトイレに行く
- トイレで鳴く、痛そうな様子がある
- 血尿が出ている
- 排尿困難に加えて、嘔吐や食欲不振がある
とくに「おしっこが出ていない」状態に嘔吐や食欲不振が重なっている場合は、緊急性が高いサインです。様子を見ずにすぐにご連絡ください。
なぜ、猫の尿道は詰まりやすいのか
猫の尿道閉塞の多くは、大きな結石そのものが詰まるのではなく、結晶と、粘液・炎症で生じた成分が合わさった「プラグ」が尿道を塞ぐことで起こります。とくにオス猫は尿道が細く長いため、この影響を受けやすい構造になっています。
おしっこを出せない状態が続くと、本来は体の外に出るはずの老廃物やカリウムなどの電解質が体にたまり続けます。これが進むと全身状態が急激に悪化し、命に関わることがあります。海外の報告でも、尿道閉塞で来院した猫の一定数が、治療の経過中に命を落としています(Beeston et al., 2022)。その多くは、重症度や見通しをふまえたご家族の判断によるものですが、それだけ緊急性の高い病気だということです。逆に言えば、早期に適切な処置を受けることで、多くの猫は回復に向かいます。
治療の流れ——まずはカテーテルで安定させる
猫の尿道閉塞では、犬の尿道結石のように内視鏡で結石を摘出するという治療は行いません。まず尿道にカテーテルを入れて閉塞を解除し、たまっていたおしっこを排出したうえで、そのままカテーテルを留置して尿の通り道を確保します。留置の期間は、当院ではおおむね1〜3日を目安にしています。
その間は入院してお預かりするか、状態が落ち着いていればご自宅で見ていただくか、猫の性格やご家庭のご事情に応じてご相談しています。猫は環境の変化にストレスを感じやすい動物で、入院そのものが負担になる場合もあるため、一律に決めるのではなく、その子に合った方法を一緒に考えるようにしています。
再発について——一度で終わらないことがあります
尿道閉塞は、一度治療しても半年ほどのうちに繰り返してしまうことが少なくありません。87例の猫を対象にした報告では、退院後6ヶ月以内に約3割の猫が再び閉塞を起こしていました(Nevins et al., 2015)。
同じ報告では、超音波検査の所見から「この猫は再発しやすい」と事前に見分けられるかどうかも調べられましたが、再発を予測できる所見は見つかりませんでした。つまり、見た目や検査だけで再発リスクを判断することは難しく、どの猫にも食事の管理と経過観察が大切だということです。食事の内容は、結晶の種類や体質に応じて個別にご提案していますので、退院時にあわせてご説明します。
繰り返す場合——会陰尿道造瘻術という選択肢
食事管理を行っても尿道閉塞を繰り返してしまう場合には、尿道の出口を広げる会陰尿道造瘻術(PU)という手術を行うことがあります。狭くなりやすい部分を通らずに排尿できるようにすることで、再閉塞のリスクを下げる方法です。
当院では、通常の会陰尿道造瘻術に加えて、包皮の粘膜を活かしてつくり直す「包皮粘膜温存法」という工夫を取り入れることがあります。包皮の組織を活用することで、見た目や排尿の様子を、これまでの生活により近い形で保ちやすくなります。手術が必要かどうか、どのような方法が合うかは、再発の頻度や猫の状態を見ながら個別にご相談します。
当院の対応
大阪市鶴見区のクウ動物病院 動物内視鏡医療センターでは、尿道閉塞の緊急処置から、再発を繰り返す猫への会陰尿道造瘻術まで対応しています。トイレの姿勢をとるのにおしっこが出ていない、何度もトイレに行くといった様子がみられたら、様子を見ずにすぐにご連絡ください。膀胱結石が関係している場合は猫の膀胱結石についてのページもあわせてご覧ください。
当院でのご相談
おしっこの様子がおかしい、以前も尿道閉塞になったことがある、という場合はご相談ください。状態に応じて、迅速に対応します。
はじめてご来院の方は 初診の患者さんへのご案内 もあわせてご覧ください。初診問診票を事前にご記入いただくと、当日の受付がスムーズです。
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