内視鏡生検と全層生検、どちらを選ぶ?違いと適応、当院の腹腔鏡補助下生検について
公開日: 2026年7月26日 / 執筆・監修: クウ動物病院 動物内視鏡医療センター
おさらい: 内視鏡生検と全層生検
消化管(胃や腸)の組織を採取する方法には、大きく分けて2種類あります。内視鏡生検の基本的な流れについては別記事「内視鏡生検とは?」で解説していますので、ここでは2つの方法の違いに絞って解説します。
内視鏡下生検
口や肛門から内視鏡を挿入し、専用の鉗子で消化管の粘膜(内側の表面)を少量つまみ取る方法です。切開を伴わないため体への負担が少なく、日帰りで行えることが多いのが特長ですが、採取できる組織は消化管の壁のうち最も内側の「粘膜層」に限られます。
全層生検
消化管の壁を、粘膜下層・筋層まで含めて全層採取する方法です。内視鏡では届かない深い層まで評価できるのが利点で、外科的な処置(手術)によって行います。
腸の断面(輪切り)のイメージ
なぜ全層生検が必要になることがあるのか
「体への負担が少ない内視鏡下生検だけで済むなら、それが一番良いのでは」と思われるかもしれません。ですが、病気の種類によっては、内視鏡下生検(粘膜層のみの採取)では確定診断に十分な情報が得られないことがあります。
猫の低悪性度消化管リンパ腫や、慢性的な消化器症状を示す犬において、確定診断に十分な組織を得るためには、内視鏡下生検よりも全層生検の方が優れている可能性があると報告されています。また猫の低悪性度リンパ腫では、回腸(小腸の末端部分)からの検体採取が診断のカギになる場合があり、上部消化管の内視鏡検査だけでは病変を見逃す可能性も指摘されています。
出典: Evans S E, et al. (2006) J Am Anim Hosp Assoc. 猫の炎症性腸疾患・消化管リンパ腫における内視鏡生検と全層生検の比較
つまり全層生検は、内視鏡下生検で診断がつかなかった場合や、より深い層・広い範囲の評価が必要と判断された場合に検討される方法です。
全層生検の方法: 開腹と腹腔鏡補助下、当院での対応
全層生検は、一般的には開腹手術によって行われることが多い検査です。お腹を大きく切開するため確実に病変部を採取できる一方、体への負担や術後の回復期間は内視鏡下生検に比べて大きくなります。
当院では、この体への負担をできるだけ抑えるため、開腹によらず腹腔鏡を使った腹腔鏡補助下での全層生検にも対応しています。小さな穴(ポート)からカメラと器具を挿入し、モニターで確認しながら必要な部分だけを採取するため、開腹手術に比べて傷が小さく、回復も早い傾向があります。
自然発生的な消化管疾患を有する犬猫60頭を対象とした後ろ向き研究で、腹腔鏡補助下生検群と開腹生検群の間で、合併症の発生率(周術期17.6%・16.6%、短期術後5.9%・0%)に統計学的な有意差はありませんでした(症例数の限られた研究であり、さらなる検証が必要です)。腹腔鏡補助下であっても、開腹と同程度の安全性で全層生検を行える可能性を示すデータです。
出典: Mitterman A M, et al. (2016) Vet Surg. (論文はこちら)
どちらを選ぶか
「内視鏡なら安心・手術なら負担が大きい」と単純に言えるわけではなく、疑われる病気の種類や病変の場所、これまでの検査結果を踏まえて、どの方法がより確実な診断につながるかを判断することが重要です。まずは体への負担が少ない内視鏡下生検から検討し、それでも診断がつかない場合や、より深い層の評価が必要と判断した場合に、腹腔鏡補助下または開腹での全層生検を検討する、という流れが一般的です。なお、内視鏡生検を含む組織診断の評価には、WSAVA(世界小動物獣医師会)の消化管標準化グループが定めた国際的な基準が広く用いられています(Day, 2008; Washabau, 2010)。
当院でのご相談
当院では消化管内視鏡による内視鏡下生検はもちろん、腹腔鏡補助下・開腹いずれの全層生検にも対応しています。どちらの検査が適しているかは、これまでの症状や検査結果によって異なりますので、まずはご相談ください。慢性的な嘔吐でお困りの場合は別記事「犬・猫の慢性嘔吐の原因と受診の目安」もあわせてご覧ください。
はじめてご来院の方は 初診の患者さんへのご案内 もあわせてご覧ください。初診問診票を事前にご記入いただくと、当日の受付がスムーズです。