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クウ動物病院 動物内視鏡医療センター  TEL: 06-6967-8668
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外科 #胆泥症 #胆石症 #超音波検査

犬の胆泥症・胆石症、放置するとどうなる?超音波で指摘されたら

公開日: 2026年8月吉日 / 執筆・監修: クウ動物病院 動物内視鏡医療センター

腹部超音波検査を受けている犬の写真

かかりつけの動物病院で、健康診断や別の症状での受診時に受けた超音波検査で、「胆嚢に泥のようなものがたまっています」「粘液嚢腫かもしれません」「小さな石があるようです」と言われることがあります。聞き慣れない言葉が並ぶと、このまま様子を見ていいのか、何か対応が必要なのか、判断に迷われる方も多いのではないかと思います。実は、胆泥症・胆嚢粘液嚢腫・胆石症は、同じ「胆嚢」に起こる変化でありながら、それぞれ性質が異なります。ここでは、その違いと、今後どう付き合っていけばよいかを、一緒に整理していきます。

肝臓と胆嚢の位置関係

胆嚢は、お腹の中の肝臓のすぐそばにある小さな臓器です。まずは大まかな位置関係を確認しておきましょう。

犬の肝臓と胆嚢の位置関係を示すイラスト

胆泥症・胆嚢粘液嚢腫・胆石症、何が違う?

まず知っておきたいのは、この3つは同じ「胆嚢の中にあるもの」でも、成り立ちも危険性も別物だという点です。

胆泥症

胆汁がうっ滞・濃縮してできる沈殿物です。犬では比較的よくみられ、多くは臨床的な意義に乏しいとされています。超音波検査では、体位を変えると重力に従って動く(沈む)のが特徴です。

胆嚢粘液嚢腫

胆嚢の粘膜からムチンという粘液が過剰に分泌され、うまく排出されないまま胆嚢の中に層状に蓄積していく病気です。胆泥とは異なり体位を変えても動かず、超音波検査では「キウイフルーツの断面のような」特徴的な模様として見えます。3つの中では、もっとも注意が必要な状態です。病態のしくみ・診断・治療の選択肢については、専門の記事「犬の胆嚢粘液嚢腫、原因・症状・診断から治療まで」で詳しく解説しています。

胆石症

胆嚢の中に結石ができる病気です。犬ではまれな病気で、海外の報告では有病率は約0.97%、そのうち約87%は無症状のまま偶然発見されているとされています。

超音波検査で「胆嚢に何かある」と言われても、そのどれに当たるのかによって、その後の付き合い方が変わってきます。

実際の症例で、体位変換による見え方の違いをご紹介します。体を仰向けに寝かせて検査すると、胆泥は下記のように重力方向に沈んで見え方が変わります(粘液嚢腫ではこうした変化は見られません)。


犬の胆泥症、体位変換前後の超音波検査画像の比較。体を横向きに寝かせて約10分後、胆泥が重力方向に沈んで見え方が変化している

実際の症例: 超音波検査の画像

【胆嚢の中に浮遊する泥状の貯留物が見つかりました】


犬の胆泥症の超音波検査画像、重力方向に沈んだ胆泥がみられる

胆泥症のエコー画像

【胆嚢の周囲に変性した部分があります。黒く見える部分が見つかりました。】


犬の胆嚢粘液嚢腫の超音波検査画像、特徴的な模様がみられる

胆嚢粘液嚢腫のエコー画像

【中に白く見える物が認められます。白く見える部分が結石です。】


犬の胆石症の超音波検査画像、胆嚢内に結石がみられる

胆石症のエコー画像

放置するとどうなる?

胆泥症をそのままにしておいても、多くは臨床的な意義に乏しく、症状が出ないまま経過することがほとんどです。健康診断で偶然見つかることが多く、指摘されたこと自体がすぐに治療の対象になるわけではありません。ただし、胆泥の量が増えていく場合や長期間続く場合には、胆嚢粘液嚢腫へ移行していく可能性も指摘されているため、定期的に超音波検査で確認していくと安心です。あわせて、後述する甲状腺機能低下症などの背景となる病気が隠れていないかを調べておくことも大切です。

胆石症をそのままにしておいても、多くは無症状のまま経過します。犬68頭を対象とした海外の後方視的研究では、86.9%は無症状のまま偶然発見され、その後の経過を追えた症例のうち、胆管閉塞・胆汁性腹膜炎・胆嚢の炎症といった合併症に進んだのは7.7%にとどまったと報告されています(Ward et al., 2020)。頻度自体は高くありませんが、指摘された場合は経過を見ながら一緒に対応を考えていきましょう。

胆嚢粘液嚢腫は、この3つの中ではもっとも注意が必要です。そのままにしておくと、胆嚢が破裂したり、胆汁性腹膜炎、胆管の閉塞といった合併症に進むことがあります。また、粘液の溜まり具合と実際の症状の重さは必ずしも一致しないため、「症状がないから大丈夫」とは言い切れない病気でもあります。落ち着いた段階で計画的に手術を行えた場合と、破裂などが起きてから緊急で手術を行った場合とでは、その後の経過に大きな差があることが報告されています(Gookin et al., 2025)。詳しくは「犬の胆嚢粘液嚢腫、原因・症状・診断から治療まで」をご覧ください。

どんな子に多い?

胆嚢の変化は、中〜高齢になるにつれて見つかる機会が増えていきます。なかでも胆泥は、健康な犬でも比較的よくみられる所見で、特定の犬種に限らず起こります。健康診断で超音波検査を受けたことをきっかけに、はじめて指摘されるケースがほとんどです。

また、甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症、高コレステロール血症といった内分泌・代謝の病気を併せ持っていると、胆汁の性状が変化し、胆嚢の病気のリスクにも関連するといわれています。胆嚢の変化を指摘された際には、こうした病気が背景に隠れていないかをあわせて確認していくことが大切です。

胆嚢粘液嚢腫については、海外の文献でシェットランド・シープドッグやボーダー・テリアなど特定の犬種で多いという報告があります。ただし、これらは海外でのデータに基づく傾向であり、国内での実際の好発犬種とは異なる可能性があります。当院でも、これらの犬種に特に偏った印象はなく、犬種を問わず起こりうる病気として捉えていただくのがよいと考えています。

どんな時に相談すればいい?

実際に多いのは、当院での健康診断ではなく、他の動物病院での診察や検査の際に「胆嚢に何かある」と指摘され、どうしたらよいか迷ってご相談にいらっしゃるケースです。指摘された内容(胆泥なのか、粘液嚢腫なのか、結石なのか)や、その時の超音波画像の様子によって、今後どのくらいの間隔で経過を見ていくとよいか、精密な検査が必要かどうかが変わってきます。

他院で指摘を受けたまま様子を見ている、あるいはセカンドオピニオンを希望されるという場合も、遠慮なくご相談ください。当院では超音波検査で改めて丁寧に評価を行い、必要に応じて血液検査などもあわせてご提案します。

胆嚢の超音波検査は、胃の中に食べ物やガスが残っていると見えにくくなるため、来院前は絶食(お水は基本的に大丈夫です)をお願いすることがあります。ご予約の際に、絶食の要否や時間帯についてご案内しますので、指示に沿ってご準備ください。

治療は?

胆泥症の多くは経過観察が中心となりますが、胆石症で症状がある場合や、胆嚢粘液嚢腫で進行が疑われる場合には、手術(胆嚢摘出術)という選択肢も出てきます。当院では、体への負担が少ない腹腔鏡下での胆嚢摘出術に対応しており、胆管の状態を直接確認できる胆道鏡(細径内視鏡)を用いた検査も可能です。治療の詳しい選択肢については、別記事「犬の胆嚢の治療、内科管理と手術という選択」で改めてご紹介します。

参考文献

  • Gookin JL, et al. (2025) J Am Vet Med Assoc. 犬の胆嚢粘液嚢腫の診断・管理に関する総説。論文はこちら
  • Ward PM, et al. (2020) J Am Anim Hosp Assoc 56(3):152. 犬68頭を対象とした胆石症の有病率・臨床像・転帰に関する後方視的研究(購読誌のためリンクなし)

当院でのご相談

健診や他院での検査で胆嚢について指摘を受けた、どうしたらよいか分からない、という場合はお気軽にご相談ください。当院では超音波検査に加え、必要に応じて腹腔鏡下胆嚢摘出術にも対応しています。

はじめてご来院の方は 初診の患者さんへのご案内 もあわせてご覧ください。初診問診票を事前にご記入いただくと、当日の受付がスムーズです。

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