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クウ動物病院 動物内視鏡医療センター  TEL: 06-6967-8668
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内視鏡医療 #膀胱ポリープ #ポリープ様膀胱炎 #膀胱鏡

犬の膀胱にポリープが見つかったら?良性と腫瘍の見分け方、膀胱鏡でわかること

公開日: 2026年9月 / 執筆・監修: クウ動物病院 動物内視鏡医療センター

「膀胱に何かあります」と言われたあとの、いちばんの心配

血尿が続くので受診した。あるいは健康診断のエコーで、たまたま見つかった——「膀胱にポリープのようなものがあります」と言われたとき、多くの飼い主さんが最初に思い浮かべるのは「これは癌なのだろうか」ということだと思います。

結論から言えば、膀胱のできものには良性のものと悪性のものがあり、症状だけでは区別がつきません。ただし、まったく手がかりがないわけでもありません。このページでは、どこを手がかりに見分けていくのか、そして最終的に何をすれば確かめられるのかを、順を追って解説します。

こんな場合は一度ご相談ください
  • 血尿が続いている、あるいは何度も繰り返している
  • 何度もトイレに行くのに、少ししか出ていない
  • 排尿の姿勢をとっているのに、なかなか出ない(いきんでいる)
  • 膀胱炎の治療をすると良くなるが、薬をやめると戻ってしまう
  • 健康診断のエコーで「膀胱に何かある」と言われた(症状は特にない)

最後の1つは見過ごされがちですが、犬112頭を調べた報告(Price et al., 2025)では、13頭(12%)が症状のないまま、別の検査のついでに偶然見つかっています。「症状がないから大丈夫」とは限りません。

膀胱の「できもの」は、大きく2つに分かれます

犬の膀胱の中に盛り上がったものが見つかったとき、まず考えるのは次の2つです。治療の方針も、その後の見通しも大きく変わるため、どちらなのかを見分けることが出発点になります。

ポリープ様膀胱炎(良性)

  • 長く続いた炎症によって、膀胱の粘膜が局所的に盛り上がってできたもの
  • 腫瘍ではなく炎症の結果。背景には、繰り返す膀胱炎や結石があることが多い
  • Price et al.(2025)の112頭では、尿路感染症が54%、尿石症が34%に見つかっている

尿路上皮癌(移行上皮癌)

  • 犬の膀胱にできる腫瘍のなかで、もっとも多いもの
  • 進行すると膀胱の壁に深く入り込み、他の場所へ広がることがある
  • 早い段階で見つけて対応を決めることが、その後を大きく左右する

そして厄介なのは、この2つが同じ症状を出すことです。血尿、頻尿、排尿困難——どれもどちらでも起こります。Price et al.(2025)の112頭でも、良性のポリープ様膀胱炎の症状は血尿38%・排尿困難25%・頻尿22%で、これは膀胱炎や腫瘍の症状としてよく挙げられるものと変わりません。

「抗生物質を飲ませると良くなるが、やめると戻る」というパターンも、どちらでも起こりえます。症状の出方や薬の効き方だけでは、良性か腫瘍かは決められない——ここが出発点です。

症状の気づき方や、実際にエコー検査で何が見えるのかは、こちらの記事でご紹介しています。

手がかり①——「どこにできているか」

症状では区別できませんが、できている場所には、はっきりした傾向があります。エコー検査でまず確認するのがこの点です。

良性のポリープ様膀胱炎は、膀胱のいちばん先の側(頭側腹側、おへそ寄りの膨らんだ部分)にできやすいことが知られています。一方、尿路上皮癌は膀胱の出口付近(膀胱三角部・膀胱頸部)を好みます。

良性(ポリープ様膀胱炎)の病変が、膀胱のどこにあったか(Price et al., 2025)

膀胱の先の側(頭側腹側) 80%
膀胱の出口付近(三角部) 13%

場所が判明した70病変の内訳。残りの約7%はそれ以外の部位でした。尿路上皮癌はこれとは逆に、膀胱の出口付近を好むことが知られています。

より古い報告(Martinez et al., 2003)でも同じ傾向が確認されており、犬17頭のポリープのうち11個が膀胱の先の側にありました。この論文自身が「膀胱頸部・三角部を好む移行上皮癌とは対照的である」と述べています。

また、エコーは場所だけでなく壁への入り込み具合も教えてくれます。Hanazono et al.(2013)の検討では、エコーで壁に入り込んで見える所見は、実際の病理での筋層への浸潤を感度93%・特異度92%で反映していました。

犬の膀胱の超音波画像。膀胱壁が厚くなり、内側の面が不整になっている

超音波検査で見た膀胱(当院症例)。壁が厚くなり、内側の面が不整になっています。ただしこの厚みが炎症によるものか腫瘍によるものかは、画像だけでは決められません。

ただし、これらはあくまで傾向です。膀胱の先の側にできた癌もあれば、出口付近にできた良性のポリープもあります。場所だけで「良性です」と言い切ることはできません。

手がかり②——尿でわかる遺伝子の検査

近年は、尿を採るだけで調べられる遺伝子の検査も行われるようになりました。犬の尿路上皮癌では、BRAFという遺伝子に特定の変化(V595E)が高い割合で起きていることがわかっており、その変化が尿の中の細胞から検出できるかを調べます。

Mochizuki et al.(2015)の報告では、自然に排尿した尿から、尿路上皮癌・前立腺癌の犬の83%でこの変化が検出されました。一方、膀胱炎の犬と健康な犬では1頭も検出されませんでした。また、Price et al.(2025)で良性のポリープ様膀胱炎の犬31頭を調べたところ、全頭が陰性でした。

この検査の読み方

  • 陽性なら——腫瘍である可能性がかなり高いと考えます
  • 陰性でも——腫瘍を否定することはできません。癌であっても2割ほどは陰性に出ます

実際、後ほど紹介するButty et al.(2021)の症例では、最終的に移行上皮癌と診断されたにもかかわらず、尿でも組織でも、この遺伝子の変化は最後まで検出されませんでした。体に負担をかけずに大きな手がかりが得られる便利な検査ですが、「陰性だったから安心」とは読めないという点は、知っておいていただきたいところです。

最後は「見て、採る」——膀胱鏡でわかること

場所も、尿の検査も、確からしさを上げてはくれますが、決め手にはなりません。良性か腫瘍かを確定できるのは、組織を採って顕微鏡で見ること(生検)だけです。

そのための方法のひとつが膀胱鏡(尿道鏡)です。尿道から細い内視鏡を入れて膀胱の中まで進み、直接見ながら組織を採ります。お腹を切らずに、診断まで到達できるのが最大の利点です。

Price et al.(2025)の112頭でも、組織を採った方法としてもっとも多かったのは膀胱鏡による生検(54%)で、外科手術による生検(39%)を上回っていました。また、膀胱鏡を行った48頭のうち43頭(89%)で、はっきりとしたポリープ状の腫瘤が確認されています。

当院では、外径2.5mmの細径内視鏡を用いています。膀胱鏡でできることは、大きく3つあります。

  • 直接見る — できものの形・色・表面の血管の状態まで、カラーで確認する
  • 組織を採る(生検) — 内視鏡の先から器具を出し、その場で一部を採って病理検査へ出す
  • 尿道も確認する — 膀胱だけでなく、尿道の途中に狭くなった部分やできものがないかを一緒に確認する
膀胱鏡(軟性内視鏡)で観察した犬の膀胱内の腫瘤。粘膜から盛り上がった病変が確認できる

膀胱鏡で観察した膀胱内の腫瘤(当院症例)。表面の凹凸や色、周囲の血管の走り方まで、その場でカラーで確認できます。

膀胱鏡下で、膀胱内の腫瘤に生検鉗子を近づけて組織を採取しようとしている場面

腫瘤に生検鉗子を近づけているところ(当院症例)。お腹を切らずに、その場で組織の一部を採取できます。これが診断の決め手になります。

体格によって、できることが変わります

ここは正直にお伝えしておきたい点です。膀胱鏡は尿道を通って入れるため、その子の尿道の太さが、そのままできることの限界になります。

当院では膀胱鏡を使ってポリープを焼いて処置することも可能ですが、日本で多く飼われている小型犬では、サイズの問題でそこまで行うのが難しいことが少なくありません。体の大きさによって、現実的な選択肢は変わります。

小型犬の場合は、膀胱鏡は「見て、組織を採る」ところまでを担い、切除が必要になれば腹腔鏡補助下の手術や開腹手術で対応する——という役割分担になります。診断は負担の少ない方法で、処置は確実な方法で、という組み立てです。

どの方法が向いているかは、体格・できものの場所・大きさによって変わります。診察のうえでご説明しますので、まずはご相談ください。細い内視鏡でどんな場所を診られるのかは耳・鼻・尿路の内視鏡検査のページで、内視鏡で組織を採る検査そのものについては内視鏡生検とは?で詳しく説明しています。

良性だった場合、この先どうなるのか

まず、いちばん知りたいところからお伝えします。ポリープ様膀胱炎と診断がついた場合、見通しは良好です。

Price et al.(2025)は112頭を中央値で8ヶ月、長いものでは8.4年にわたって追跡していますが、その間に悪性腫瘍が発生した犬は1頭もいませんでした。症状がぶり返した犬は23頭(20%)でした。

ただし、「良性でした、終わり」にはなりません。ポリープ様膀胱炎の背景には、尿路感染症(54%)や尿石症(34%)といった原因があります。ポリープだけを見ていても、大もとを治さなければ症状は繰り返します。ポリープは結果であって、原因ではない——ここが治療の要点です。

それでも、様子を見ながら見直す理由

数は多くありませんが、注意しておきたい報告が1例あります。Butty et al.(2021)が報告した3歳の犬は、血尿と頻尿で受診し、膀胱鏡で組織を採った結果ポリープ様膀胱炎(良性)と診断されました。しかし症状は続き、8ヶ月後に膀胱鏡での生検をやり直したところ、移行上皮癌が見つかりました。

この症例で印象的なのは、その間エコー検査では一貫して「変化なし・安定している」と見えていたことです。画像は「そこに何かがある」ことは教えてくれますが、「それが何に変わったか」までは映してくれません。

これは報告としては1例であり、先ほどの112頭では悪性化はゼロでした。過度に心配していただく必要はありません。ただ「良性と言われたのに、治療をしても症状が続く」というときは、もう一度確かめ直す価値がある——そう考えておくのが安全です。

治療の選択肢

ポリープ様膀胱炎と確定した場合、治療は「大もとの原因を治すこと」と「ポリープそのものへの対応」の二本立てになります。Price et al.(2025)の112頭では、抗菌薬が73頭(65%)、外科手術が36頭(32%)に行われていました。

感染や結石が背景にあるなら、まずそちらの治療が優先されます。それでも症状が続く場合や、ポリープが大きくなっておしっこの通り道をふさぐおそれがある場合には、切除を検討します。Martinez et al.(2003)は、ポリープをすべて切除する外科手術がもっとも確実だったと報告しています。

当院では、体格やポリープの状態に応じて、膀胱鏡での処置と腹腔鏡補助下の手術を使い分けています。どちらにしても、まずはそれが何なのかを確定させることが先です。

当院でのご相談

血尿が続く、膀胱炎を何度も繰り返す、エコーで膀胱に何か見つかったと言われた——といった場合はご相談ください。診察のうえで、膀胱鏡検査が必要かどうかも含めて、一緒に検討していきましょう。

はじめてご来院の方は 初診の患者さんへのご案内 もあわせてご覧ください。初診問診票を事前にご記入いただくと、当日の受付がスムーズです。

症状の気づき方と実際の症例についてはこちらでご紹介しています。

参考文献

  • Price MP, Thomas R, Breen M, Kendall AR, Vaden SL (2025) J Vet Intern Med 39(3):e70049. 犬112頭のポリープ様膀胱炎について、症状・画像所見・部位・治療・転帰をまとめた後ろ向き研究。論文はこちら
  • Martinez I, Mattoon JS, Eaton KA, Chew DJ, DiBartola SP (2003) J Vet Intern Med 17(4):499-509. 犬17頭のポリープ様膀胱炎の臨床像と治療成績。移行上皮癌との発生部位の違いを指摘した報告。論文はこちら
  • Butty EM, Hahn S, Labato MA (2021) J Vet Intern Med 35(3):1551-1557. ポリープ様膀胱炎と診断された若い犬が、8ヶ月後の再生検で移行上皮癌と判明した症例報告。論文はこちら
  • Mochizuki H, Shapiro SG, Breen M (2015) PLoS One 10(12):e0144170. 自然排尿の尿から BRAF V595E 変異を検出する手法の検討。犬の尿路上皮癌・前立腺癌の診断への応用。論文はこちら
  • Hanazono K, Fukumoto S, Endo Y, Ueno H, Kadosawa T, Uchide T (2013) Vet Radiol Ultrasound 55(1):79-84. 犬の移行上皮癌における超音波所見と予後の関連。壁への浸潤所見の診断精度を検討。論文はこちら

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