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クウ動物病院 動物内視鏡医療センター  TEL: 06-6967-8668
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内視鏡医療 #胃ろう #PEG #栄養チューブ

犬・猫の胃ろう(PEG)チューブとは?鼻・食道との使い分けと、内視鏡で入れる方法

公開日: 2026年9月 / 執筆・監修: クウ動物病院 動物内視鏡医療センター

「食べてくれない」が続いたとき、治療そのものが止まってしまう

病気の治療を続けているのに、ごはんを食べてくれない。口元へ運んでも顔をそむける、あるいは口や喉の病気で飲み込むこと自体ができない——こうした状態が続くと、病気と闘うための体力そのものが失われていきます。

そんなときの選択肢が栄養チューブです。「チューブ」と聞くと身構えてしまう方がほとんどですが、実際には鼻・食道・胃という3つの入れ方があり、使う期間と病気の場所によって選び分けます。このページでは、その使い分けと、内視鏡で入れる胃ろう(PEG)について解説します。

こんなときに検討します
  • 数日以上ほとんど食べていない、体重が落ちてきた
  • 口・喉・食道の病気で、飲み込むことが難しい
  • 強制給餌を続けているが、嫌がって思うように入らない
  • 治療は続いているのに、体力が戻ってこない
  • 手術のあと、口から食べられるようになるまでの間だけ栄養を届けたい
  • 猫で、数日食べない状態が続き黄疸が出てきた

とくに猫は、数日食べないだけで肝リピドーシス(脂肪肝)という別の病気を併発することがあります。この場合、栄養を入れること自体が主要な治療になります。慢性的に吐いてしまって食べられない場合はこちらの記事もあわせてご覧ください。

栄養は「支え」ではなく、治療の一部です

チューブでの栄養は、回復を待つあいだの「つなぎ」だと思われがちです。しかし実際には、栄養を入れられるかどうかが治療の成否そのものを左右する場面があります。

その代表が猫の肝リピドーシス(脂肪肝)です。食べない期間が続くと肝臓に脂肪が蓄積し、さらに食欲が落ちるという悪循環に入ります。この病気では、栄養を確実に入れ続けることが治療の中心になります。

では、一刻でも早く始めるべきなのでしょうか。実はそうとは限りません。肝リピドーシスの猫48頭を調べた報告(Wallace et al., 2024)では、入院から12時間以内に栄養を開始した群と、12時間を超えてから開始した群で生存率に差はありませんでした(68%対57%)。むしろ入院期間は後者のほうが短いという結果でした。先に状態を落ち着かせてから始めても、結果は変わらないということです。焦って決める必要はありません。

チューブには3種類あり、「使う期間」と「病気の場所」で選びます

どれかが優れているというものではありません。どのくらいの期間必要か、そして体のどこに問題があるかで選び分けます。当院ではいずれにも対応しています。

① 経鼻チューブ —— 数日程度の短期に

  • 鼻から食道・胃へ細い管を通します。全身麻酔をかけずに入れられるのが最大の利点
  • ただし管が細いため、使えるのは液状の食事に限られます
  • 入院中の数日など、短期間のつなぎに向いています

② 食道ろうチューブ —— 数週間程度の中期に

  • 首の横から食道へ管を入れます。麻酔は必要ですが短時間で設置できます
  • 経鼻より太いのでペースト状の食事も通せます
  • 口や喉に問題があっても使えます。ただし食道そのものに病気がある場合は選べません

③ 胃ろう(PEG)チューブ —— 長期に、そして食道が使えないときに

  • お腹の外から胃へ直接。食道に問題があっても使えます
  • 3つの中でもっとも太く、普段食べているごはんをペーストにして使えることもあります
  • 長期間の使用に向いています。必要な間だけ入れて、あとから抜くこともできます

つまり、短期なら鼻から、中期なら食道から、長期あるいは食道が使えないなら胃から、というのが基本の考え方です。実際にはその子の病気・体格・全身状態を見て決めます。

「内視鏡で入れる」とはどういうことか

PEGという呼び名は Percutaneous Endoscopic Gastrostomy(経皮内視鏡的胃ろう造設術)の略で、「内視鏡を使って入れる」ことが術式の定義そのものです。

内視鏡を使わない場合、胃にチューブを設置するにはお腹を開ける手術になります。これに対しPEGは、口から入れた内視鏡で胃の内側を見ながら、お腹の外から専用のキットで管を通します。行うのは切開ではなく穿刺(せんし=針で刺して通すこと)で、お腹を切り開くことはありません。

この違いは、処置そのものの短さに直結します。手技は10〜15分で終わることも珍しくありません。切るところが小さい分、麻酔をかけている時間も短く済みます。

すでに弱っている動物にとって、これは小さな差ではありません。食べられない状態が続いている子は、多くの場合すでに体力を消耗しています。そこに開腹手術と長い麻酔の負担を上乗せせずに済むかどうかは、実際の判断で大きな要素になります。

当院では、設置のために入院していただく必要はありません。(もとの病気の治療で入院が必要な場合は別ですが、チューブを入れること自体のための入院は不要です。)

なお、内視鏡で入れる方法と外科的に入れる方法で「設置したあとの合併症」を比べた報告(Salinardi et al., 2006)では、犬だけ・猫だけで見ると両者に有意な差はありませんでした。入れたあとのトラブルの起きやすさが劇的に変わるわけではなく、内視鏡の利点は処置そのものの負担が軽いことにあります。当院で使う消化管内視鏡についてはこちらのページでご説明しています。

どのくらいの期間、入れておくものなのか

「一度入れたら、ずっとそのままなのでは」というご心配をよくいただきます。そうではありません。必要な期間だけです。口から十分に食べられるようになれば抜きます。

目安として、食道ろうチューブを入れた猫248頭を調べた報告(Breheny et al., 2019)では、留置期間は中央値で11日でした。ただし幅は大きく、1日で抜けた子から93日入れていた子までいます。病気が治るまでの期間そのものなので、当然ばらつきます。

同じ報告で心強いのは、入れている期間の長さも、チューブを入れたまま退院することも、感染や死亡のリスク上昇とは関連しなかったという点です。「長く入れているほど危険」ということはありません。

抜くときのこと

十分にごはんを食べられるようになったら、ご相談のうえで抜く時期を決めます。こちらから一方的に決めるものではありません。

「抜くときもまた麻酔が必要なのでは」と心配される方が多いのですが、使用するチューブの種類によっては、麻酔をかけずに抜くことができます。入れるときより、抜くときのほうが負担は小さく済みます。

起こりうることも、正直にお伝えします

栄養チューブは有用な方法ですが、トラブルが起きないわけではありません。食道ろうチューブの報告では、犬猫225例で44.4%(Nathanson et al., 2019)、猫248例で35.8%(Breheny et al., 2019)に何らかの合併症が見られています。

内訳としてはチューブが抜けてしまうこと(14.5%)、管の出口の皮膚が感染すること(12.1%)が多く、多くは処置で対応できるものです。ただし感染が進んで外科的な処置が必要になった例もあります。

とくにお伝えしたい2つのこと

  • ステロイドや抗がん剤を使っている場合は、出口の感染が起きやすくなります(Breheny et al., 2019 でオッズ比3.91)。PEGでも、重い合併症の割合がステロイド使用時に高かったという報告があります(Aguiar et al., 2016)
  • 長く食べていなかった子に、急に栄養を入れすぎないこと。血液中のリンが急激に下がる「リフィーディング症候群」が起こりうるためです(Brenner et al., 2011、報告は1例)。入れ始めは少量からにします

入れたあとの暮らし

チューブを気にして引っ張ってしまう子もいます。エリザベスカラーを使う方法もありますが、食欲が落ちている動物にカラーを付けると、かえって元気がなくなってしまうことがあります。

そこで当院では胃ろうチューブ専用に開発していただいた術後服を使っています。チューブを収めるポケットが付いたもので、カラーを使わずに管理できます。以前は猫用のみでしたが、最近は犬用も入手できるようになりました。

胃の手術後に胃ろうチューブを留置した犬。専用の術後服を着ており、脇腹のフラップの内側がチューブを収めるポケットになっている

胃の手術を受けたあと、口から食べられるようになるまで胃ろうチューブで栄養を届けた犬(当院症例)。専用の術後服を着ており、脇腹に見えるフラップの内側がチューブを収めるポケットです。

チューブが入っていても、普段どおりに過ごしていただけます。行動を制限したり、ずっと安静にさせておく必要はありません。

よくいただくのが「お風呂はどうすればいいですか」というご質問です。設置した直後は傷の様子を見ていただきますが、傷が落ち着いてしまえば、入浴も問題ありません。

チューブが入ったまま自由に歩き回っている様子や、実際に食事を入れている場面は、胃瘻チューブ/PEGのページで動画をご覧いただけます。

当院でのご相談

当院では経鼻・食道ろう・胃ろう(PEG)のいずれにも対応しています。どれを選ぶか、そもそもチューブが必要かどうかを含めて、その子の状態を見たうえで一緒に考えます。

「食べてくれない」という状態が続いている、ほかの病院でチューブを勧められて迷っている、といった場合はご相談ください。

はじめてご来院の方は 初診の患者さんへのご案内 もあわせてご覧ください。初診問診票を事前にご記入いただくと、当日の受付がスムーズです。

「チューブを入れるのはかわいそうではないか」「無理な延命にならないか」——そうしたお気持ちについては、胃瘻チューブ/PEGのページで当院の考えをお話ししています。

参考文献

  • Wallace OP, Jablonski SA, Thomas JS, Bock JH, Langlois DK (2024) J Vet Intern Med 38(6):3144-3152. 肝リピドーシスの猫48頭で、経腸栄養の開始時期と転帰の関連を検討した研究。論文はこちら
  • Breheny CR, Boag A, Le Gal A, et al. (2019) J Vet Intern Med 33(3):1306-1314. 猫248頭の食道ろうチューブについて、留置期間と合併症を調べた多施設研究。論文はこちら
  • Nathanson O, McGonigle K, Michel K, Stefanovski D, Clarke D (2019) J Vet Intern Med 33(5):2014-2019. 犬102頭・猫123頭の食道ろうチューブの合併症をまとめた後ろ向き研究。論文はこちら
  • Aguiar J, Chang YM, Garden OA (2016) J Vet Intern Med 30(4):1008-13. ステロイド治療を受けている犬猫での、胃ろう(PEG)チューブの合併症を比較した研究。論文はこちら
  • Salinardi BJ, Harkin KR, Bulmer BJ, Roush JK (2006) J Am Anim Hosp Assoc 42(1):51-6. 犬42頭・猫52頭で、内視鏡による設置と外科的な設置の合併症を比較した研究。論文はこちら
  • Brenner K, KuKanich KS, Smee NM (2011) J Feline Med Surg 13(8):614-7. 肝リピドーシスの猫にリフィーディング症候群が生じた症例報告。論文はこちら

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