犬・猫の誤飲、内視鏡による異物摘出の流れと当院の対応
公開日: 2026年7月27日 / 執筆・監修: クウ動物病院 動物内視鏡医療センター
誤飲した際の対応の一つに、薬剤で吐き出させる「催吐」処置がありますが、対象物の形状や状態によっては催吐が適さない場合や、催吐だけでは十分に対応できない場合があります。そうした場合に選択肢となるのが、内視鏡での確認・摘出です。
誤飲直後の応急対応については別記事「犬・猫が誤飲したら?今すぐの応急対応と受診の目安」、催吐処置の詳しい話については別記事「犬の催吐(吐かせる処置)とは?方法・薬剤・リスクを解説」で解説していますので、あわせてご覧ください。ここでは、実際に内視鏡を受ける場合の流れと、当院での対応について詳しく解説します。
病院での診断の流れ
問診・触診に加え、レントゲン検査や超音波検査で誤飲物の有無・位置を確認します(レントゲンに写らない素材のものもあるため、超音波検査を併用することもあります)。誤飲物の位置や大きさが確認できたら、内視鏡での摘出が可能かどうかを判断します。
内視鏡検査・摘出の実際の流れ
内視鏡での摘出は、次のような流れで行います。
- 全身麻酔をかける
- 口から内視鏡を挿入し、内部を観察しながら異物の位置を確認する
- 専用の鉗子で異物をつかんで摘出する
- 摘出物や周囲の粘膜に損傷がないか確認する
対応できる範囲は、食道・胃、内視鏡が届く腸の範囲です。開腹を伴わないため体への負担が少なく、日帰り〜短期入院で済むことが多いのが特長です。
実際の症例: 内視鏡で摘出した異物
当院で実際に内視鏡を使って摘出した異物の症例です。
内視鏡で摘出が難しい場合の対応: すべての方法にワンストップで対応
異物のサイズが大きい場合や、鋭利で消化管を傷つけるリスクが高い場合、紐状異物が腸に食い込んでいる場合などは、内視鏡単独での摘出が難しいことがあります。動物病院によっては、この時点で大きく開腹する手術に切り替えざるを得ないケースもあります。
当院では、内視鏡単独での摘出はもちろん、腹腔鏡を使った腹腔鏡補助下での摘出(小さな切開での対応)、開腹での摘出まで、すべての方法に対応しています。内視鏡での摘出が難しいと判断した場合でも、そのまま大きく開腹するのではなく、その場で腹腔鏡補助下の術式に切り替えて対応できます。処置の途中で状況に応じて術式を変更できるため、体への負担を必要最小限に抑えながら、確実に異物を取り除くことを目指せるのが当院の特長です。
自然発生的な消化管異物を有する犬猫81頭を対象とした後ろ向き研究で、腹腔鏡補助下内視鏡的異物除去(LAER)は、40頭中35頭で完全または部分的な摘出に成功しました。従来の腸切開術と比較して、術後の入院期間が短く、鎮痛の必要性が少なく、自力での食事再開が早かったと報告されています(合併症の発生率は同程度)。
出典: Cola V, et al. (2024) Vet Surg 53(7):1266-1276.
紐状異物では、胃にとどまっているうちと腸まで進んでからで治療が変わります
糸やリボンなどの紐状異物は、まだ胃の中や胃の出口(幽門)にとどまっている段階であれば、内視鏡で摘出できることもあります。お腹を開けずに済むので、体への負担は大きく変わります。
胃の出口(幽門)に紐が引っかかっていた症例。この段階では内視鏡で摘出できました。
ただし、これはいつでもできるわけではありません。紐の先がすでに腸の奥まで進んでいる場合、内視鏡は届きません。腸がたぐり寄せられてアコーディオンのように畳まれてしまっている場合や、壁が傷んでいる場合には、お腹を開けて取り出す手術が必要になります。同じ「紐を飲んだ」でも、経過した時間によって治療がまったく別物になるということです。
※ ここから手術中の写真が1枚あります。
紐が腸に引っかかり、腸がアコーディオン状に畳まれてしまった別の症例。この状態では開腹手術が必要でした。
紐状異物がなぜ塊状の異物と違って腸を切ってしまうのか、その仕組みは犬・猫が誤飲したら?今すぐの応急対応と受診の目安のページで図とともに解説しています。口や肛門から紐が見えていても、引っ張らずにご相談ください。
摘出後の経過・結果
内視鏡での摘出の場合、多くは日帰り〜短期の入院で経過をみます。摘出物や粘膜の状態によっては、絶食期間を設けたり、胃腸を保護するお薬を処方したりすることがあります。腹腔鏡補助下や開腹での摘出を行った場合は、内視鏡単独の場合よりも入院期間がやや長くなることがありますが、従来の開腹による腸切開術と比べて、回復が早い傾向があることが上記の研究でも示されています。
当院でのご相談
誤飲が疑われる場合は、様子を見ずにまずはお電話でご相談ください。当院では消化管内視鏡による摘出から、腹腔鏡補助下・開腹での摘出まで、状況に応じた対応が可能です。誤飲直後の応急対応については別記事「犬・猫が誤飲したら?今すぐの応急対応と受診の目安」もあわせてご覧ください。
はじめてご来院の方は 初診の患者さんへのご案内 もあわせてご覧ください。初診問診票を事前にご記入いただくと、当日の受付がスムーズです。